第20章 家族というもの
「しかもその上公開ディープキスって」
「手前にだけは言われたかねぇよイリーナ…」
「相手が私みたいなのならともかく蝶なんだから。それもさっき蝶からキスされて落ち着かせてた奴がする?そんな事」
「……………え、待て手前ら揃って俺の敵かよ!?」
「「「考えれば考える程可哀想に思えてきて…」」」
でもそうか、だからダメなのか。
家にいる時とか、二人でいる時にこんな事はないけれど。
私は多分、今までの世界の中でスキンシップだとか、そういうものに一度慣れてしまったから。
それに、あんまり自分から関わろうとなんてしなかったはずなのに、変に気にかけすぎる人ばっかりだったから。
周りに、女の子がこんなにいる状況も珍しかったから。
「……もうそろそろ一日目終わりますし…中原さん、白石さん連れて今日は家でゆっくり二人で過ごされてみては…?」
殺せんせーがいいですよね皆さん?と聞くと、皆どころか客として来ていたはずの人達までもがうんうんと頷いていた。
『え…い、いや私、今日全然働けてな「貴女には今回人の何倍も働いてもらっています。後は何とかしますし…中原さんにも少々お勉強していただかねば」!中也さ、んが…勉強…?』
どこまで教育熱心なのだろうか、この先生は。
どこまで生徒想いなのだろうか、このヒトは。
「中原さん、明日です。明日…もう一度来られるようであれば、今度こそ白石さんが寂しがらないよう、“自然に”接してあげて下さい」
「!自然にって…俺は別にいつも通り……」
「多少は周りへの失礼だって働かせていいものを、貴方はしっかりしている人なだけあってそれをあまり良く思わないでしょう…周りに気は使わなくて結構です。貴方も、子供になっても良いのですから」
「『!!!』」
殺せんせーの言葉に中也と目が合った。
そうだ、そういえばそうだった。
進路相談の時にだって、あれだけ自分がいる悩んでいたのもそこじゃないか。
この人にだって、普通はなかったのだから。
この人にこそ、こんな生活はなかったのだから。
大人にならなくちゃ死んでしまうような裏社会で、生きざるを得なかった人なのだから。
そのまま成熟して、小さな頃から大人になってしまった人なのだから。
…私なんかを拾って育てて、余計にそうなっちゃってるのに。
「……明日も来るよ、約束してたしな」
『…』