第20章 家族というもの
家には、電車に乗って帰った。
トウェインさん達、組合のメンバーも明日また来てくれるらしく、その時にまた話そうねと私達を半強制的に家に帰るように促していた。
「…蝶……あの…」
『……何、ですか…?……あ、その…え、と……ご「謝んなよ…?」え…』
「忘れたか?…それなら何度でも言って思い出させてやる。お前が謝らなくちゃいけねえのは、どういう時だ」
『……け、ど…私、中也さんの事困らせ…て…っ』
「違う。俺がお前を困らせたから俺がそれを教えられただけだ…それに俺がいつ困ったっつったよ。お前に困らされたくらいで俺がお前に謝らせることがあったか?」
無いよ。
無いけど…無いけど、他の人から子供になっても良いのですから、だなんて言葉。
…そんなの、言われる気持ちは痛いほどに知ってる。
嫌なくらいに、胸に刺さるのを知ってるし……何より、この人が私の目の前でそれを言われるのが嫌なことくらい、私は誰よりも知っている。
言っても、この人にだってプライドはある。
自尊心は高い方だし、おまけに負けず嫌いだし……私の前では特に、かっこつけだし。
…そうか、だから余計に周りに気を配っちゃうんだ。
今までみたいに。
私に言われた時にだってすごい顔してて、私以外になんか言われたらこの人…
それに、何よりも一度ハッキリと同じ事を言ってしまった事のある私の目の前でそれを言われてしまったのに。
『だ、って…知ってる、もん……中也、さん…私の前で言われるの、一番嫌なことくらい』
「…お前のためになるアドバイスをされただけだ、お前が気に病むな」
『嘘ッ…、だって中也さん、絶対また思ってる…っ……私と比べたら自分なんかって、絶対!!…思ったから私の方見たんでしょ……?言いかけて、反論しかけたんでしょ?』
俺なんかは全然大したことないのに、寧ろって。
「……けど、そうだったとしてもお前は謝らなくていい。餓鬼になれなかった俺が悪い…何よりお前を寂しがらせたのは俺だ。………でもありがとうな、そんな風に俺の事、よく分かってくれて…こんな奴とずっと傍にいてくれてよ」
くしゃりと私を撫でたその手は少し震えていた。
声だって若干震えてて、涙混じりで意地っ張りで。
こんな奴なんて貴方が言っちゃだめ。
私が、貴方が子供になるはずだった、ポートマフィアでの子供時代を奪ってしまったのだから。