第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
それにしても律儀だよねえと谷崎さんは私を褒めだした。
え、何、褒めても何も出ませんよ。
「だって、社員寮からの通学じゃなくなったからっていって毎朝ここに来てから学校行ってるんでしょう?小さい事だとは思うけどいい事だと思うよ」
『そうですか?一応依頼にあたってるわけですから、出勤って形をとっておこうと思いまして』
というのも勿論あるけれど、その実恐らく顔を出さなければ過剰に心配する方が多いだろうから来ているのである。
谷崎さんも例外ではない。
というか、顔を見せるか連絡を入れるかしないと、絶対皆さん慌てて仕事の効率悪くなるから。
「そっかそっか、じゃあ今日も行ってらっしゃいだね…あれ、ちょっと髪型変わった?」
谷崎さんが私の頭をじっと見て言った。
『え、いつもと同じでサイドアップになってるはず…』
「ああ、ここだ。頭の上編み込みになってるし、ゴムが見えないように三つ編みで根本巻いてある。似合ってるよ!」
そうか、違和感の正体は編み込みか。
谷崎さんの指摘を受け、少しアレンジのかかった今日の髪型を想像して、最終的にまた中也さんを思い浮かべた。
『そうですか…ありがとうございます、今日も一日頑張ってきますね!』
敬礼のポーズをとって笑顔を向ける。
中也さん、いつの間そんなところまで気を配るようになったんだろ?
なんにしても、私のことを考えてくれたんだなあと思うだけで今日一日分のやる気に繋がる単純な私は、朝からご機嫌である。
「うん、行ってらっしゃい!」
椚ヶ丘の山の麓からのフリーランニング二日目。
テンションが上がりに上がっている今日の私はとても調子が良かった。
『えへへ、今日はもうなんでもできる気がするなあ』
スキップ混じりに木の上を飛び回る。
「!…白石さんか」
まさか浮かれてニヤニヤしている私を、烏間先生が目撃していたとは思ってもみなかったけど。
『中也さんへの愛が私を強くするのです…とうっ!』
校舎に辿り着き、地面に着地してから一人決めポーズをする。
恐らく昨日の三倍位の早さで到着した。
『うふふ、絶好調だ!』
「なぁにが絶好調何だよ、アホか。ニヤニヤしやがって」
校舎の中から呆れた声が聞こえた。
あれ、こんな時間に教室に誰か来てるだなんて珍しい。
『今日は絶好調なのー…って、寺坂君?今日は槍でも降るのかしら』
