第20章 家族というもの
「やっほ〜、蝶ちゃんとこ文化祭だって聞いて来ちゃった♡」
『え…い、いやあの…本国まだ帰ってなかったの…?』
「俺も病院から許可を取るのに苦労するくらいにはまだ怪我が大きい人間なのだが…ヘリで来て正解だったな」
頭上を見ると、もう離れて小さくなってしまったヘリコプターの影が。
そうか、この人まだ療養中か。
ってなんでそれでこんなところまで来てんのフランシスさんまで。
『…なんでフランシスさん……に、ジョンさんとナサニエルさんまで』
「可愛い娘の顔を見にだな…」
「トウェインが行くって言ってたから無理矢理ついて来ちゃった♪」
「私は…マーガレットが」
ピクリとナサニエルさんの方を向くと、手前にいたフランシスさんやジョンさんが少し横にはけて、ナサニエルさんの後ろから綺麗なドレスがチラリと見える。
マーガレットさんって、確かナサニエルさんが付き人をしてたっていう…?
ナサニエルさんの後ろから出てきたマーガレットさんの顔を見て、思い出した。
「…貴女の所なら、行きたくなって」
『!か、身体はもう大丈夫なんですか!?』
「身体って、寧ろあの後貴女の方が大変だったんでしょう?……本当に、感謝しているわ」
そうだ、確か芥川さんと対決して、瀕死の状態だったところを怪我だけ治していったんだっけ。
歩けているのを見ると骨折の方も無事治ったみたいだし。
『い、いや…でもまさか来て下さるなんて』
席の方に案内していくと、集まっていた殺し屋さん達がざわつき始める。
「…君、彼らは……組合の重鎮達では…?」
『?はい、そうですね。その頭と幹部格の』
「「「なんで組合のそんな面子が揃ってんだよ!!?」」」
組合というものをそんなに知らない皆と違って、殺し屋さんの中でもロヴロさんは特に動揺している様子だった。
『なんでって言われても…あ、あちら側のご好意で……?…っひゃ、ッ』
「そーそー♪特に僕のご好意で♡」
ぎゅうっ、と片手で抱き寄せられ、そのまま子供が駄々を言うように抱きしめられる。
犯人といえば、何を隠そうあのマーク氏である。
名前で呼んでやるか、全力で他人のふりでもしてやろう。
『は、離して下さいませんかマークさん』
「なんでそんな抵抗の仕方するかなあ?久しぶりで緊張しちゃった?も~、かわいッッ、たあああ!!?」