第20章 家族というもの
「機嫌直してくれって…いいだろ?お前に会いてえだけだし俺」
『…お仕事抜けてまで来なくていいです』
「いや、来るだろ普通。お前俺が倒れたって聞いたら授業そのまま受けてられんのか?」
『…………ふん、』
「言いながら抱きついてちゃ反論出来てねえからな!?…ったく、悪かったよんな事言って。もしもの話だからそんな怖がんな」
頭の中を過ぎった嫌な想像。
死神と相見えた時の事を思い出して、余計にリアルに想像してしまって寒気までしてきた。
それを簡単に見抜かれてしまって、頭と背に手を軽く置かれてピク、と身体を強ばらせる。
だって図星だったから。
言われただけでも怖かったから。
『死神ごときに策略にはめられて致命傷負った人が言っても説得力ない』
「ごときって…けどちゃんと生きてんだろ?つかお前が生きてるうちに俺は死ぬわけにはいかねえんだよ」
『……横にいても女の子とばっかり話してるくせに』
「え」
ピシッ、と中也が固まった。
それにジロ、と顔を上に向けて、中也の顔を覗き込む。
『大人で?かっこよくて男らしくて紳士的なんだ中也さん?へえ、そう…やけに評価高いじゃないですか、女の子達から』
「い、いやあれはあいつらが勝手に…」
『私なんか何も言えなくされてたのに、中也さんは女の子相手にデレデレしちゃうんだ?私なんか口さえ出させてもらえなかったのに?それも子供が相手なはずなのに?』
「蝶さん待て、落ち着け?やましいことは決してな……ッぁ…!!?ちょ、おまッ…っ」
中也の首元に腕を回し、そこに口付けていく。
あんまり得意じゃないのは知ってるんだからね。
名付けて必殺織田作絞め。
『…ッ、……は…ん…』
「お、おい、お前それはせめて帰ってからに…ッ、……蝶…っ?」
『わ、たしが嫌なの分かってるくせにッ!!…馬鹿、中也さんなんか馬鹿!!』
「嫌なのって…いや、すまん!!そうだな嫌だったな、やっぱ俺が悪かっ……ッ!!?」
首から離れてそのまま中也を押し倒す。
怒ってる時に中也なんて呼んでやるもんか。
ベンチに押し倒したところでそのまま唇を上から塞いで、目を開けておくのはまだ恥ずかしかったためそっと閉じた。
「「「んな…っ!!?」」」
「!…ッ、おい、離れ……っ!!」
周りに気付かれ、中也さんが私の肩に手を置いた。
「…蝶!!!」