第20章 家族というもの
「でもびっくりしましたよ、まさかここまで駆けつけてくるなんて」
「手前らんとこの担任が飛んで来ちまったしな。本当なら車で来たかったが蝶の容態も心配だったし……倒れたっつったから何事かと思ったぞ本当」
「すみません、私もそこまで事情を聞いていなくて、烏間先生にこちらは任せていましたから…中原さんなら何かわかるんじゃないかと思いまして」
「……ま、迎えに来てもらって助かったわ。もしまた同じような事があったら俺に許可を取らなくても連れていってもらって構わねえ」
私の隣で他の人と話すのと一緒にそんな事を言い始める中也さんに反論しようと口を開きかけると、すぐさま有無を言わさぬよう口に食べ物を突っ込まれた。
「あ、あの中原さん…蝶ちゃん何か言いかけてたんじゃ……?」
「蝶は今これが食いたかったんだよ。な?」
絶対誤魔化したこの人。
「では、そのようにさせていただきます…けど、お仕事の方は本当によろしかったのですか?」
「ああ、大丈夫だ。任務じゃなかったし………何よりこいつの所にいてやれて良かった」
倒れたと聞いて何事かと思った…先程の彼の言い回しは、私の身体を案じての発言だった。
しかしその先に続く言葉は、何事もなくて安心した、というものではない。
そばにいてやれて良かった。
私にとっては、一番怖いことだっただろうから。
そう言ってくれたこの人には勿論救われているし、今だって正直言うと嬉しいし安心もしてる。
けれど、またこうやって私が足を引っ張ってる。
「まあ、任務中なら蝶の容態だけ伝えてくれりゃ、すぐに片して連れてってもらうが」
「相手の事を考えるといたたまれませんね…」
「中原さんほんと蝶ちゃん思いですよね、かっこいい!」
「こういう大人になってほしいよねうちの男子達も」
「ははっ、そうかそうか」
……笑っちゃってるし。
何よ、普段子供相手にそんな顔しないくせに。
それに比べて私なんか邪魔してばっかりだし、すぐ暗くなるしマイナス思考ばっかりだし。
口開こうとしたらすぐに防がれるし。
「発想が子供よねやっぱり。中原さんくらい大人で、これくらい男らしくて紳士な人も早々いないと思うけど」
「紳士?俺がか?」
「紳士ですよ!どれだけ私達お世話になったことか…」
私も知らなかったような行動を耳にして更にもやもやし始めた。