第20章 家族というもの
「んで、とんでもねえ形で予定外にも一日目にお前んとこに来ちまったわけなんだが…来たからには何か注文したら、持ってきてくれるよなぁ?俺のメイドさん」
『え…?』
「「「ぶっ…!!」」」
中也が私に向かって発した言葉に、悪意は全くなかったのだけれど聞き返した。
「えってなんだよ、えって」
『だ、だって私調理の方のお仕事で…』
「だから、来てやったサービス。本当は明日に来るつもりだったけど来たんだ、いいだろそんくらいしてくれても?」
『め、メイドさんって…わ、わかっ……わか、りました』
言うのもかなり照れくさい。
しかし確かに、私のためにわざわざ苦労をかけさせてしまったのだ、それくらいなら誰も文句は言わないだろうし、迷惑もそんなにかからない。
目を伏せて、言いやすかったはずの敬語口調に戻るも、なんだかそれすら気恥しい。
「お前メイドって…まあいいや。……んじゃ、とりあえずどんぐりつけ麺頼むわ、お前と村松の自信作だろ?」
『!は、はい!!』
そのままオーダーの品を作りに調理室へ入る。
本当は走っちゃダメだけれど、思わず駆け足で中也の元から離れていった。
覚えててくれた、そんなにいっぱい話したわけじゃなかったのに。
忙しい中で時間作って来てくれるだけでもこれ以上にないくらい嬉しいのに、そんな話まで覚えててくれてただなんて。
『はぁ…は……っ』
「白石、体調はもうい…ってなんだその顔!?すげえ顔してんぞお前大丈夫か!?」
『だ、いじょぶ…!!!いい、から…つけ麺!!つけ麺作る!!!』
「つ、つけ麺か?それならそこに麺とスー『麺から作る…!!』麺そこにあるだろ!?さっき俺作っといたんだぞ!?」
「まあまあ村松君、白石さんの心情も察してあげましょう…」
村松君に突っ込まれ続けるも、そこに現れた殺せんせーによって突っ込みは止む。
「心情って……ああ、あの人か。…そういう事な、それであんな……」
『そ、そういう事とかないし…関係ないもん…』
「「「悔しいけど可愛いわお前…」」」
その場にいた寺坂組の糸成君以外の男子三人から何故だか褒められた。
普段なら動揺しているところだけれど、しかし今はそれさえ余裕が無い。
『め、麺出来た……!!む、村松君!めめ、メイドさんってあれだよね!?何かラブラブサービスしないといけな「いらねえよ!!」そう…?』