第20章 家族というもの
「中原さ…!白石さん!無事か!?倒れたと聞いたぞ…」
『!…は、い』
教室の方を覗きに中也の後ろにくっついていくと、真っ先に烏間先生が私に気が付いた。
思わず中也の後ろに隠れてしまうも、中也はそれに怒るようなことはせず、隠れていてもいいと言うように頭を優しく後ろ手に撫でるだけだった。
「烏間さん、やっぱりまだ言わねえ方向で頼みます…不意に見られちまったとはいえ、まだ怖いということなんで」
「そうか…白石さん、何よりも君が無事に目を覚ましてくれて何よりだ。もう少し傍にいるべきだったな」
『……烏間先生のせいじゃ、ないですから』
私の問題…私が怖いと思うのがいけないだけの。
「…君が怖いだろうに、ありがとう。二人には詳しくは説明していないが、周りには言わないでくれとだけ言ってある…君の様子を見てとても言う気にはなれなさそうだったが……心配していたぞ」
『…すみません』
「!…」
こういう時に、なんて言えばいいのか分からない。
心配させてしまったのは私だし、そもそも言ってなかったのが悪いわけだし、ごめんなさいの言葉以外、他に何も思いつかない。
違うんだって、今も中也さんが私の方にそうじゃないんだと目で訴えかけてきているけれど、私にはそれ以外に正しい答えが分からないのだ。
相手が、中也さんでも織田作でもないから。
友達だなんてカテゴリーの人、相手になんて普段してこなかったから。
「君が謝る必要は無いんだが…元気になったら、またいつも通りの顔を見せてあげるといい」
ほら、また言わせた。
謝る必要はないなんて…謝らなくてもいいんだって。
小さな頃から…物心ついた頃からの癖なのだ。
烏間先生がその場からいなくなると、中也さんがこちらを向いて腰を屈める。
「……なんで、また謝ったんだ?…何も悪い事はしてないだろ、してるようなら俺が真っ先に注意してるし怒ってるはずだ」
『…私が、言っておいたら……そんな風に思わせないで、済んでたから』
「言えねえことくらいあるだろ、誰にだって…度合いだって人それぞれだ。よく分かってるだろお前なら……他の誰でもない俺と一緒にいてくれたお前なら」
俯いていた顔を少し上げると、中也さんと目線が合った。
『………出た、織田作の直伝技』
「伊達に付き合い長くねえよお前とも…織田でもそう言うぞ」
『…そう…ですか』