第19章 繋がり
会計をする頃にはまたいつの間にか手袋をつけていた。
だけど、確かに手袋…外してた。
『ち、中也さん…?』
「なんだ?」
『…その、無理…されてません、か……私が変なこと、言ったから』
「変な事ってなんだよ、お前は別に何もおかしな事は言ってねえだろ」
それによくよく考えてみれば中也さんに食べさせてもらってるのにさっきサービス断っちゃったし。
あれ、そう考えると中也さんにも迷惑しかかけてないんじゃ…
「……い、…おい?…様子変だぞ、さっきから?また何かごちゃごちゃ考え込んでんだろ…お前、さては人に親切にされんの慣れてねえな?」
『…親、切って……だって、私人に迷惑しかかけてな…』
「なわけあるかよ阿呆、周りが勝手にお前のこと可愛がってくれてるだけだ。それをどう受け取るかもお前に選択する権利はある…受け取ってやった方が相手は喜ぶだろうがな」
簡単に、清々しいほどにばっさりと言われた。
またこの人は、勝手にという言葉を使う。
意図的になのか無意識なのかは分からないけれど、恐らく私が気に病まないでいられるような言い回しをしてくれている。
「そんな考え込むなよ、俺にだって遠慮してくれなくて全然いいから」
『!そうだ、なんでさっき中也さん手袋……!!ご、ごめんなさ「いいって、謝んな」…で、も……』
「悪いことした時にはちゃんと教えてやるから、そん時以外は謝んなくていいんだよ…それに、お前が言ったんだろ?俺の手が好きだって。そんな物好き初めて出会ったけどな」
『物好きって…だ、って中也さん……は、私に…………怖い事、しないから…』
言ったら何も返事がこなくて、気になってチラリと上を見る。
すると中也さんが片手で口元を押さえて目を見開かせていて、何故だか驚いているようだった。
「……お前、怖がらせたばっかりだろ…肩掴んで…」
『…でもその後優しくしてくれた……中也さんの手、蝶この世界で一番大好……ッ、きで………?』
力強い包容が、自分より大きな腕が、私の体をすっぽりと包み込んでしまうように私を包み込んだ。
それに一瞬体を強ばらせてしまいはしたけれど、私に触れた腕が少し震えているような気がした。
「…ありがと……う…」
『!……蝶、の方が…ありがとう…』
背に腕を回して、彼が私にしてくれたようにそこをゆっくり撫でた。