第19章 繋がり
「おばさんこれ商品化しねえの!?絶対ぇ売れるよこれ間違いねえって!!!」
「…蝶ちゃんが心配なくらいにとろけちゃってくれてるから本当に美味しくできてるのねぇこのプリン」
とろけた頬が緩んで元に戻らない。
久しぶりだ、数十年ぶりに食べた気分。
『プリン…』
「そんなに喜んでもらえたんなら…試しに売り出してみようかしらね?」
「『プリン!!?』」
私と中也さんの声が重なった。
いっせいに身を乗り出して立ち上がり、それにおばさんもおじさんもびっくりする。
「あ、あらあら…そっくりね二人共、ふふっ……そうね。蝶ちゃん特性レシピのプリン、商品化させちゃいましょう!レシピのお礼で蝶ちゃんが来てくれたら一個プレゼントしちゃおうかな♪」
『!?そんな、悪いですよ!!』
「いいのいいの!それに多分一つじゃ足りないでしょうから、気持ち程度にでも思って?」
この少しの時間にもう私の甘いもの好きがバレてしまっているよう。
『…で、も……』
「いいじゃねえか、もらうようにしろよ発案者?おばさんがこう言ってくれてんだし」
『中也さんまで…?』
「甘えられるもんには甘えとけ、じゃねえと損だぞ」
中也さんの今の言葉に目を丸くする。
だって、昨日私が話をしている間の作之助と同じような事を言っているから。
…にしても作之助って呼ぶのはやっぱり変な感じがするな、織田作がしっくりきすぎてて。
『…』
しかしやはり、どう考えても申し訳ない。
それに、私はそんなことをしていただいてもいいような人間じゃない…無理だ、相手に悪すぎる。
考えれば考えるほど自己嫌悪が深まっていくばかりで、何も言えないまま俯くことしか出来なかった。
「…じゃあ、また気が向いたらそうさせてもらえるかしら蝶ちゃん」
『へ…』
おばさんの提案に顔を上げると笑ってくれていて、それに少し安心してコクリと小さく頷いた。
迷惑、かけたのに。
自分の言葉にさえまた自信が持てなくて、そのまま再び俯いた。
「…………よし、んじゃ、会計して帰るか」
『は…い……?……!え…?中也さ…あ、の…!?』
頭に置かれた手の感触に違和感があった。
私に触れる時は、決まって手袋を付けていたはずだったのに。
片手だけ手袋を外して、彼は私に触れてくれていた。
「…何間抜けな面してんだよ」
『い、いえ…なんでも…』