第19章 繋がり
「なんならずっとしててやってもいいけど?」
『…恥ずかしい、ですそれは』
「そうか?お前くらいの年なら全然普通だろうと思うが」
『!普通…?』
私がつい聞き返すと、きょとんとしながら中也さんは普通だろ、と普通に言ってのける。
「まあそれはそれとして、本当軽いなお前?それ生活してて辛くねえのか?」
『…慣れすぎてあんまり分からないです』
「それ危ねぇやつだろ…今日からもう少し肉とスタミナ付けれるようなもん食わせるからな」
調理できるのだろうか、この人は。
真っ先に頭に思い浮かんだのが悲惨な仕上がりになってしまった砂糖粥なのだけれど、それはもう記憶の彼方に封印しようと心に決めた。
『中也さんは…今までご飯はどうしてたんですか?』
「俺?外食か買ってくるか、拠点で食うかが殆どだったな。たまに姐さんに世話にもなってたが……まあ、お前もいるし更生するにもちょうどいいだろ」
『……じゃあ、お風呂入るまでは付けてるんですね。それ』
私がふと指差してそう言ったのは、彼が手に付けている黒い手袋のこと。
「!…ああ、これがどうかしたか?」
『素手…見たことないなって思って』
「……俺が手袋外してても、あんま見ねえ方がいいぞこんなもん。んな事よりお前は自分の心配してろっつの」
今のは意図的に話題を逸らされた。
…まあ、人間聞かれたくないことくらいはあるだろうけれど。
全然変じゃ、無かったのに。
調理中とお風呂くらいでしか見たことのない、何の変哲もない彼の素手。
何も、おかしくなんてないのに。
私なんかの手に比べたら、全然綺麗なのに。
『中也さんの手、好きなのに…』
「…………お、前…今なん____」
「二人共〜、プリン冷えたわよ!」
「『!!』」
中也さんが何かを話しかけようとしたところで、タイミングが良かったのか悪かったのか、プリンが完成したらしい。
「瓶は即席だったから少し大きくて冷やすのに時間かかっちゃったけど……?中也君、どうしたの?元気なさそうに見えるけど」
「!?い、いやそんなこと…俺の分まで!いいんですかいただいて?」
「どうぞどうぞ!二人のために作ったんだから!」
今この人、また嘘ついた。
誤魔化して笑ってる…かなり動揺してるし、私の事見ようともしない。
失言……だったかな。
嫌な思いに、させちゃったかな。