第19章 繋がり
「まず、俺は二股も何も本命もいない。分かるか?俺は誰ともそういう関係になっちゃいないし、なろうと思ったことも一度もない。OK?」
『…そういう?』
「恋人関係」
『……あれ、そういう話だったの…?』
盛大な溜息と、クスクスといった笑い声が二つ聞こえた。
「だから無いんだよ、考えてみろ?俺がんなもん作るような質の男に見えるかお前?」
『え?でも中也さん、誰か女の人の事好きになってずっと探してたって太宰さんが……あ、これ内緒だった。忘れてください』
「…あいつマジで明日死なす」
何故だか耳がほんのり赤いような気もする中也さん。
これは…当たりの情報じゃあ……?
『……中也さん、その人のところに行くの?』
「あ?行くも何も、そもそも情報源が信用ならねえにも程があんだろ。心配しなくとも俺が気にかけるような人間この世にお前くらいしかいねえって」
『ふうん…?』
どっちなのかは結局曖昧なままではあるけれど、読心術を使うのは少し気が引けたのでやめにした。
それにこんな性格の人が私にそんなことを言うんだ、まあ太宰さんの言う“愛人”とやらは冗談だったのだろう。
「あんまり信用してねえなさては…?なんならいいぞ、俺がどっか行ったりお前を手離すようなことがあったりでもしたら、お前が全力で俺のこと引っぱたいてくれればいい。多分正気に戻る」
まさかこんな所でした口約束が、後に本当に果たされてしまうことになろうとはこの時、考えもしていなかったのだけれど。
『私が引っぱたくって…中也さんを?中也さん、私が嫌になるようなことするの?私、中也さんに手出すなんて出来ないと思いますけど』
「出してくれなきゃ俺が困る、その時俺は逆ギレするような事はあってもお前に手は出せねえだろうから。いいな?全力でだぞ?」
『……そんな事ないと思って返事しときますね…?』
話の区切りがいいところで、中也さんの元にストレートのアイスティーが届けられる。
個人的に好きな風味の茶葉であったため、特に私は気にいったのだけれど…この人無理して私に合わせてないのかな?
「…?紅茶ってやっぱり、なんかまた独特な風味がするんだな?」
『シロップ…ありますよ?』
「あ、それでか。確かに昨日も砂糖を入れたような…!美味いなこれ、もっと前から飲んでみりゃよかった、やっぱり家でも飲めるようにしよう」