第19章 繋がり
『それはそうとして…すごいなあ、こんな美味しいデザートが食べれるなんて思ってもなかった……プリンとかって、売ってないんですか?』
「え…あ、プリン?ごめんね、うちはまあこの通り色んな職業柄の人が通ってるから、デザートの種類はそこまで豊富じゃなくて…」
『絶対美味しいと思うのになぁ…トロットロの滑らかなプリン。……中也さんは調理させてくれないし』
「当たり前だろ、お前の見に何かあったら俺死ぬぞ。それに水仕事してて蝶の手が痛『もういいです』…」
シフォンケーキをぱくぱく食べ進めながら、未だこの世界で出会っていない滑らかプリンを所望した。
お昼に確かに太宰さんが私用にプリンを置いて行っててくれたけれど…美味しかったけれど。
でもだからこそ食べたい、滑らかプリン。
滑らかを通り越してとろけるプリン…というかもうとろけてるプリン。
『ん~…レシピだけなら覚えてるのに保護者が厳しいからなぁ……』
「………レシピ覚えてるの?それなら、試しに今から作ってみましょっか!」
『え…?』
奥さんの突然の提案に、思わず間抜けな返しをする。
「中也君にこんなに可愛らしい家族が出来たんだもの、お祝いだとでも思って♪」
「い、いいんすか?そんないきなり…」
「材料は揃ってるからね…今日まだ時間ある?」
「今日はここでゆっくり、蝶が心ゆくまでデザートを食い尽くしてもらおうと思ってたんで…」
「なら決まり!蝶ちゃんレシピ書いてくれる?それなら過保護な保護者君も何も言わないわよ♪」
過保護って…と地味に反論する中也さん。
奥さん強い、あの中也さんを黙らせるなんて。
紙とペンを渡されて、そこにさらさらと覚えている自家製プリンのレシピを書き連ねる……のだけれど、三人からの視線で気が付いた。
『?なんでそんなに見…て……』
しまった、ここ日本じゃないか。
前にいた世界の過ごしていた国の影響で、イタリア語で書く習慣が付いてたの忘れてた。
『……すみません、見なかったことに。日本語…日本語……』
「お前さっきの何語…?」
『…イタリア語』
「それで?今普通に平仮名も片仮名も漢字も絶妙に使いこなされてるんだが……お前、実は何ヶ国語使いこなせるんだ?」
『……覚えてな「覚えきれねえってか、なあ」は、はい!!レシピ書けたレシピ!!』
初めて中也さんをスルーした時だった。