第19章 繋がり
『…大丈夫ですよ中也さん、私どこにもお嫁に行かないから』
「蝶…!!俺の味方はお前だけだ!!!」
言い方に語弊があっただろうか。
違うよ、私気付いちゃったから。
『ここ、日本でしょ?それならあるんじゃないですか?“戸籍制度”』
「!確かにそうだけど…」
『それなら多分、私結婚出来ません。戸籍、無い上に血縁を証明できる人もいませんから』
「「「!!!」」」
今までに、何度それで色々なことを諦めてきたことか。
ここが日本であれば、出来ることに制限がついて回ってくるのが当たり前。
だって、この世に存在している証拠がどこにも無いのだから……そもそも、存在するはずが無かった存在なのだから。
私がここに存在していることそのものがおかしなことなのだから。
「…蝶、ちゃん……だっけ。…六歳、だったわよね?」
『……育ちが育ちなので、色々詳しいところがあるだけです。結婚とか…入れられる籍、無いですし。そもそもどこにも行く宛ないですから』
中也さんの元にいられなくなったら、私はどう生きて行こうか。
そこが問題なのだけれど、まあ…その時はその時で、自分の好きな所に行けばいいかなんて考えてみたり。
本当は、喉から手が出るほど目の前のこの人を連れて行ってしまいたいのだけれど。
「…籍、どうにかして作れそうにない?無かったら無かったで色々と不便でしょ…学校とか、そういうのも」
『学校も別にいいです、元々勉強は独学で色々と学んでたので…中也さんと一緒の職場で働かせてもらおうかなって』
「!つまり、あれ?蝶ちゃんもなにか異能力を?」
『はい、そんなところです』
ニコリと微笑んで見せるも、三人ともどこか顔が曇ったままだ。
ごめんとも言いづらいだろうし、かといって心の優しい人ならば、笑えることでもないのだろう。
そういえばそうだったな、今の今まで忘れてた。
学校なんて文化もあって、日本においては戸籍がものを言うような所がやっぱりあるから…まあ、よく思ってくれる人からしてみれば、大変なことなのだろう。
けれども生憎私は、そもそもあまり表面的な付き合いの人間を信用しない質である。
加えて友人というのもそこまで必要だとは思わないし、寧ろ警戒するべき相手としか認識しない。
学校などという機関に通うには、些か人生経験の度が過ぎてしまっているのだから。