第19章 繋がり
「…!…ろ……って、…起きろ!!」
『んにゃッ!!?…はへ……ッ?』
「なんでこんなに人が大勢いる中爆睡してやがんだお前は、何かされたらどうするんだ!それにこんな所で寝てて風邪でもひいたらどうするつもりだ、あぁ!?」
『……中也さんの夢~…♪』
「誰が夢だ、誰がああ!!!」
耳の奥がキーンとして、暫くしてからハッとした。
『………中也さん…?』
「そうだ、待たせて悪かった…太宰の野郎はどこ行ったんだよ」
『中也さ…んが……もうちょっとで帰ってくるから……って…待ってて、眠たくなって…?』
段々と鮮明に思い起こされる、中也さんがどこかに行ってしまう前のこと。
それに身を固くして、無意識に中也さん相手に警戒態勢に入ろうとする私の頭。
「あの野郎、頼むっつったのに……蝶、あの…」
『!……は、い…?』
「………ごめん、肩…痛かったろ。…それに一人にさせちまって」
『…っ、…ぁ…い、いえ……』
スルリと肩に伸びてきた手を振り払うわけにもいかず、大人しく撫でられる。
今は、痛く…ないけど。
「…本当、ごめん。俺も頭ん中混乱して…お前は、普通の生活を送らせてやれるようにって…思ってて」
『え…?』
「仕事でもなんでも、いくらお前が強くても、傷付いたりすんのが嫌だっただけなんだ…それに、お前は多分…零って名前が嫌いだろ」
やっと分かった、この人が怒ってた理由…この人が焦ってた理由。
そっか、太宰さんが言ってた通りなんだ。
零の呼び名のルーツを知っているから、私が嫌なことも知っている。
屈辱的な名前で、ただ怖いだけの、意思も何も無いただの呼び名。
そこが一番だったんだ。
私の性質を見越した上で、無益な争いに参加もさせたくないって事だったんだ。
…言ってくれなきゃ、分からないじゃないですか。
『……私…中也さん…に、嫌われたんじゃないかって…』
「…誰が嫌ってなんかやるか、馬鹿…」
『ん…ッ、…中也さん…?…苦しい』
「我慢しろ、馬鹿な事考えてた罰だ」
『…罰…だけど嬉しいよ…?』
「!…いいんだよそれで」
力いっぱい抱きしめられて、中也さんの言う罰が執行される。
なんだ、嫌われたわけじゃなかったんだ…怒りたかったわけでも、私を置いていったわけでもなかったんだ。
同じ目線になった彼の首元に、私も腕を回し返した。