第19章 繋がり
「あいつは、生まれた時から人に恵まれてなんかなかったんだよ…最初に死んだ後の話は、本人から直接聞け。俺の口から言っていいものなのかは判断しかねる」
異世界の話など、自分の口から簡単に言っていいようなものではない。
少女はきっと、その情報が世間に露見するのを恐れて絶対言うなと口止めをしたのだろうから。
「まともに育ってなんか来れなかったんだ…昨日あいつには言ったが、ちゃんとした過程をすっぽかして人生経験ばっかり積んでるから、あんな脆い奴になる。…拾って、あれだけ心を許させてるからには、責任は重いぞ?中原」
「……けど、それなら尚更だ。尚更あいつをこっち側へこさせたくはねえ…それに、余計にあいつがここに入りたがる理由が分からねえ」
「?…今言っただろ、あれだけお前に心を許させているんだ…俺とは比べ物にならないくらい、お前は白石に好かれてる。…白石なら、中原と一緒にいたいからだとか言ってまとめそうな気はするがな」
何の理由があろうとも、基本の考えはそこだろう。
織田は思う。
あの少女の行動原理は、基本的に中原絡みであるはずだから。
「俺と一緒にいたいからって、そんな事のためにんな事させれっかよ…」
「……お前の言う“そんな事”が、あいつにとっては意外と一番大切なことかもしれないんだぞ?お前も両親という件に関しては、分かる面もあるんじゃあないか?…それがあいつの歳を考えてみろ」
それこそ、懐くという表現は本当に正しい。
ただシンプルに、懐いた相手は大切で大好きな相手であって、そんな相手と離れていることが何よりも寂しく悲しいことなのである。
あの子供大人の考えは、実はそれだけ単純なものだ。
一度喜びを与えた罪は重い。
「今、ようやっと親の顔を覚え始めた赤子のようなものだと思っておけ……強さや頭の良さや経験に伴った技術がそれをそう感じさせないだけだ」
「……手前、言わねえだけで随分気に入ってんだろ蝶の事……ずるいなぁ?大人は…言ってやらねえのか?」
「ああ、気に入ってる。否定するのも虚しいくらいには…が、遠まわしに言ったりそれっぽい事を言っても、勘付きもしないからなあの子供は。それに、多分俺より何段も思い入れが強いお前が言ってくれた方が、向こうは一番嬉しいだろうよ」
「!…変なところで鈍いからな、あいつ……俺が素直に言ったら大泣きされたが」