第19章 繋がり
「映像まで……それ、白石は…」
「知らねえよ…悟らせてたまるか、内容は墓場まで持っていくつもりだ。必要なところはあいつの命に関わっちまうから、森先生には話をしたが」
「…それで、あいつの性格からしてみても、どう考えても自分から志願したわけじゃあないだろう、と?」
深く頷いた中原に紅茶を差し出すと、中原はそれに軽く首を傾げる。
「紅茶…なんて飲んでたか?」
「さっき仕事終わりに買ってきた。白石に勧められてな…」
「……手前、よくあの状態の蝶を…「お前も大人になればわかる…相手だって中身はお前より大人なんだ、分からなくても当然だろう」餓鬼扱いすんなっての」
「だが、生きてる経験の割にあいつもなかなかに餓鬼な部分がある…特に対人関係。“仲直り”なんてもんは特別苦手そうだぞ、白石は…大人びてるし本当に大人ではあるがな、あれは大人の皮をかぶっただけのただの子供だ」
紅茶を一口飲んでから、中原はそれが気に召したのか、手を離さずに少しずつ飲み続ける。
「子供って…一昨日も言ってたなそんなこと。……俺よりもってことか?」
「お前よりもくらいのレベルじゃない、あれは六歳にも満たないのを通り越して、赤子同然の脆さだ……家庭環境から考えてもまあ仕方ないのだろうが」
大人はずるいんだ。
少女にむけて放った言葉に、織田は納得しつつ、心の中で謝罪した。
大人は子供を守って生きていかなければならない…時にずるく、非道になってもだ。
「家庭環境…って、あいつ家族いたのか!?……って、もう流石にいなくなって……」
「あいつの血の繋がった家族は、物心つく前からあいつの事を、とっくに人として扱ってはいなかった…暴言暴行は当たり前、血なんて流さねえ日の方が珍しく、食事なんてものをさせられた覚えもない…………はずなのに、あいつの身体は死ななかった」
「……は…?」
「…その末に、初めてあいつが死んだのは丁度あいつが六歳頃の頃だ。自分の持つ能力を使って、初めて家族に逆らって…それから」
家族に見つかり、幼かった少女は追い詰められ、川に身を投げ、それでも足りずに舌を噛んで自殺した。
「な……、っ…」
「それが、あいつが最初、本当に死んだ時の事だ。しかしそれから、まあ今の通りにあいつの身体はまた再構築されることになる……セーブポイントは六歳だがな」
実兄の事は隠しておいた。