第19章 繋がり
「蝶ちゃん、本当は気が進んだわけではないんだろう?そもそも君は、どちらかといえば平和主義者な方ではないのかい?あまり……血は、好きではないだろう」
『……そんなことより、中也さんと一緒にいられる方がいいんです。私だって…人間……ですもん。…一緒に…いたいですよ』
「…皮肉な事に、君はこれまでの経験から演技が相当得意らしい……けど、君さっきから私を相手にヒントを出しすぎているよ?それほどまでに怖かったかい…中也がいなくなるかもしれないと考えるのは」
気づかれた…?
…そうか、この人の方が、私よりもよっぽどあの首領の汚い部分は知ってるはず。
それにこの人の勘の良さだ…予想も付くか。
「大方人質にでも取られてしまったんだろう?あの人のやりそうな事だ…中也には、言わないつもりかい?あいつは多分今、君の事で頭がいっぱいでそこまで考えられる状態じゃあないだろうけれど」
『……言ったら…私、太宰さんでも殺せる自信…ありますよ』
「…そりゃあ怖い!口には気を付けないといけないね…森さん、せめてこの子の体質だけでも情報は守りましょう。幸い向こうは動ける足ではないですから…それに、知られればそれこそ、どうされてしまうか」
「………そう、だね。蝶ちゃん、君の…能力を見せる分には何も言おうとは思わないが、その体質だけは絶対に知られないようにしてほしい…君ならもう分かっているかもしれないが、あの首領は…」
君を弄んでいた例の科学者と、同じ部類の人間だと考えておいた方がいい。
なんて分かりやすい例えだろう。
幸運だったのは、相手にはまだ私の体質がバレていないこと…それと、まだ私に有力な道具を持ち合わせてはいないこと。
それから何よりも心強いのは、私の周りに、今は力になってくれる人がいること。
まだ数人程度しか…それも知り合って間もない付き合いだけれど、きっと私の味方でいてくれる。
だから…だからこそ、こんな時だからこそ。
『…………中也さん、は…嫌……だったのかな…』
一緒にいてほしいのに。
「…私達みんな、嬉しくないし嫌に思うよ…あいつは人一倍蝶ちゃんに思い入れがある分、余計にそうだろうね」
一緒にいれるんだなって、笑ってくれればよかったのに。
『……中也さん来るまで、ここいます』
「…ご飯は?」
『中也さんの手作り以外食べたくないです』
「…うん」