第19章 繋がり
パシッ、と華奢になった腕は簡単に止められて、走ってきたのか息を切らしているその人の声に現実に引き戻された。
『…な、……に…?なんで、こんなとこに…誰かに頼まれた…?ねえ…なんで、止めたの?私今度こそ、ちゃんと死ねたかもしれないんだよ…っ?帰れたかも、しれな……ッ!?』
「……っ、止めるに決まってるだろ…、お前が死んだら…お前が痛がるのも苦しむのも…誰も見たくないんだよ……お前、いいのか?ここで死んでッ…中原がどんな風に思うか、分かって死のうとしたのか…?」
怒られるでも、叩かれるでもなかった。
ただ抱きしめられただけだった。
何でここにいるのかも、何で私なんかを助けたのかも…何で、私なんかを抱きしめてくれるのかも分からなかった。
『…何で…?なんで貴方までそうやって…優しく、するの…?放っておいてよ…また、辛くなるじゃない……また、死にたくなるじゃないッ……織田作…っ』
「……お前がいなくなるのは、俺が嫌だから…それだけだ。…一度家へ来い、落ち着くまでいていいから…理由も無理には聞かない。ただ、お前が死ぬというのならその後に俺も後を追って死んでやる」
『!?そんな事「嫌ならやめてくれ、俺もまだ死にたくはない」…ずるい…』
「大人はずるいもんさ、お前が思ってるよりもよっぽどな」
妙に、気になる事はあった。
この人…織田作之助は、最初に出会った時から私が安心するような行動ばかりをとる人で、すぐに子供慣れしている面倒見のいい人なのだろうと想像がつくような人。
なのだけれど、子供扱いをしているというよりは、どこかの誰かと同じく“私”を見てくれているような人。
マフィアなのに血の匂いもしないし、かといって最下級構成員というほど力が無いわけでもない…寧ろこの人は多分強い。
そして何よりも違和感があったのが、最初に出会った時、私の事をただの子供として見てはいなかった、中也さん以外の唯一の人であったこと。
『…織田作……私の事、どこまで知ってるの』
「何も……ただ、お前の目はただ平凡に生きてきただけの人間のそれとは違う…その独特の雰囲気にも滲み出るほどにはな。多分、ある意味俺より世界を知ってる…そして誰よりもきっと」
子供になりきれなかった子供だ
この人は何を知ってるの…?
どうしてそんな事が分かるの?
「俺の恩師とよく似たオーラを持ってる…」
