第19章 繋がり
「あ、あの…えっと……?」
『…!…ごめんなさい…』
「い、いや…謝らなくていいけどよ……もう少しこうしてた方がいいか?」
『…』
少し、躊躇った。
変に思われるんじゃないかって。
けれど、頭に触れてる手がまたゆっくりと動いたから。
何も言ってないのに、私の思ってる事が分かるかのように、続けてくれたから。
「……ま、俺はお前の名付け親だからな…これくらいの事余裕だよ」
『…ん……うん…』
「なんだ?また泣きそうな顔して…嬉しいなら笑えって、もうずっと泣いてばかりじゃねえか」
困ったように笑う中也さんに言われても、笑う方法がよく分からない。
『笑うこと…なん、か……そんな、なくて…っ』
「?けど、昨日はいい表情してたぞ?お前」
『!…今は………無理』
「…そうか、んじゃ、またの楽しみに取っとくよ」
私が笑うのが、楽しみ?
変な人…
「そんでもって蝶、お前甘いもんがそんなに好物だったのか?」
言ってくれればもっと早くに用意してやったのに、と言う中也さん。
しかしそういえばそうか、私、甘い物大好きだったんだ。
『……忘れてた』
「!…そうか、んじゃ、これから色々食わせてやるよ。味の保証は出来ねえけどな」
『中也さんのケーキ美味しかった』
「………砂糖粥の方はど『あれはもう嫌』ですよね」
料理が上手いのやら苦手なのやら…お粥だけじゃ判断出来ないんだよなぁ。
でも、カップケーキは美味しかった。
『…中也さん中也さん、カップケーキもうちょっとありま「せん」…じゃあ蝶がお菓子作「らせねえからな?」…』
「拗ねてもダメだぞ、あんな量食ってたら糖尿病になるわお前。よくその身体にあんなでたらめな量のスポンジ生地入ったな?」
『……ずっと食べてられますもん』
「…今日はまだ仕事残ってっから、こんだけな。また明日…なんなら食いにどっか連れてってやるよ」
思いついたように言う中也さんだけれど、この人は私が嬉しかった理由を理解してはいないのだろうか。
変なところで天然だよなぁ、この人。
『………中也さんの作ったのが食べたい』
「生まれてこの方ろくに料理もしたことねえような奴に菓子作りは『食べたい』…じゃあ作っておいて、それは夜食おう。な?それならいっぱい食えるぞ」
『!食べる!…中也さんのお菓子……えへへ…』
「!…いい顔してる」
