第19章 繋がり
目を見開いた中也さんが冷や汗を流す。
けど、慣れっこだ、そんな目線。
今までいくらだって見られてきたんだから。
成長したところで私みたいな体なんか、所詮は気持ちの悪いものだし。
見られて、視られて診られて生きてきた。
実兄にだって、ただ見られるだけの時だってあった。
恥ずかしいも何も、私の体はおかしいから。
この世界に来たところで、そんなおかしな体は女性のそれでは無かったのだから。
だから慣れてる、結局皆私のことを知れば、いやらしい目なんて向けてはこなくなるのだから。
なのに、今何が起きてる?
体が無理矢理押されたかと思えば背中に柔らかい感触があって、景色がぐるりと変わって…目の前に中也さんがいて。
「お前…これが今俺じゃなかったら、容赦も遠慮も情もねえんだぞ…本気で頭狂ってる奴が相手なら、お前本当に襲われてるんだぞ…っ?」
『……そんなの迎撃すれば関係な…っ、…手…中也、さん…っ?手…離し……ッ!…な、に…?』
「…慣れてるって、怖がりなお前が?んなわけあるかよ…今俺にこうやってされてるだけで、びびって抵抗も出来ねえような奴が」
『!!…そ、れは中也さんだか……っ!?な…にして…ッ、や、だ…その目やだっ!中也さ…』
向けられた鋭い目が、心無いそれと重なった。
恐らく普通に生活しているだけではする必要の無いような人間の本能のそれを、心ゆくまで私の身体に教え込んだ兄と重なった。
「相手がどんな野郎だろうと、相手が男でお前が女なら……それも、ただの餓鬼じゃない女なら、尚更。分かるんだろ?いきすぎたら、何されるかくらい」
『……ぁ、…ッ……や、だっ…中也、さんやめ…そ、の目…やめっ…』
「…………悪い、やり過ぎた。…ごめんな…けど、本当にやめてくれ。お前がもし攫われでもしてそんな事でもされてたら、考えただけでも辛ぇから…」
『…っ!……も、しな…い…ッ?あ、の目…しないっ…?』
ふわりと抱きしめられてから、中也さんの雰囲気が元に戻ったことに気が付いた。
「しねえよ、想像以上に怖がらせちまったみてえだし………お前、もし俺があのままお前の身体に触れてたら…逃げられたか?」
『!!…中也さん……なら…別に、いい…』
怖く、しないなら。
「…………それは我慢しすぎだ、馬鹿。…蹴り飛ばしてでも逃げろよ、そういう時は」
