第19章 繋がり
「はい、まず今日買うもん確認してみろ」
『………中也さんのシャツ』
「お前それさっき泣いてなかったら頭グリグリしてたからな?」
『…中也さんのシャツがいいもん』
「え、何それ本気で言ってたのお前?デレ期ですかそれ」
デレ期とかいうわけのわからない言葉は無視して、ソファーに座らされたまま目の前でしゃがんでいる中也さんの方を見る。
『中也さんのにおい好き…中也さんのセンス好き、中也さんの…中也さんが着てる服好き。中也さん好き……だから中也さんのシャツが欲しい』
「許しそうになったけど却下だ却下!!なんか絵面的にやべえから俺が!!捕まるやつだからそれ!!」
『なんで…?』
「世間様の目はありとあらゆるところまで予測したがるもんなんだよ、覚えとけ!……つかシャツだけじゃダメだろ!?他にもいっぱい…ボトムスとか靴とか!!あとその…下着、とか」
流石に私が年上であると意識したのか、声が小さくなった。
…可愛い。
『別に今こんなに小さいし、そんなの無くても中也さんのシャツがあったら「お前今履いてねえの俺しか知らねえって分かってて言ってんのかそれ!?買うからな!?絶対買うからな!!?」…』
私は今一文無しなのになんでそんなに払うかな、この人は。
『…じゃあ履く……から、中也さんの「二着やるよもう!!仕方ねえな!!」!本当に…!?』
「なんでこういう時は分かりやすいんだよお前………やるよ、やるけど下、ボトムス買ったらちゃんと履けよ。あと下にインナーも着用すること」
『?…成長期来てないのにい「いるんだよ、世の中どこで変な目で見られてっか分からねえから!」私まだ六歳なのに…?』
「それでもだ、俺のシャツがいいってんなら、サイズがでけぇ分尚更…角度によっちゃ上までボタン止めてても見える可能性あんだろ。あと夏場は汗で、冬場も厚着した時に汗で風邪ひくかもしれねえ」
思ってた以上に細かかった。
風邪って……いや、百歩譲ってそこは気にしないにしても、私の体くらい、見られたところで何も無いだろうに。
それにまた見えた過保護の片鱗。
なんという根強さだ。
「他…欲しくなくても着るようなもん、挙げろ。あと上着と防寒具と…」
『……!…タイツ…』
「あ?タイツ?…んじゃそれも見るか」
きゅ、と中也さんのシャツの裾を引っ張って、素足を少し隠して頬を熱くさせた。
