第19章 繋がり
重力のベクトルを操る能力だなんて…そんなの、方向も力の大きさも、全てが自由自在に操れるということ。
確かにそれなら、大勢の敵を一掃できる。
それに肉弾戦を得意としているのであれば、近接戦闘になっても寧ろやりやすくなるだけだ。
「まあ俺のことより、お前はとっとと身体治すのに専念しとけ。ずっと着物か俺の服かじゃあ不便にも程があるだろ」
「あ、やっぱりこの服君のだったんだ?変なセンスだと思った」
『……私は別に…中也さんのお下がりでも』
「「絶対ダメだ」」
なんでそこだけは息が合うのこのお二人は。
けど、中也さんの服着てて楽だし好きなのに…太宰さんはこう言うけれど、私と好みが合うみたいだし。
なかなかに好みのセンスなのだけれど。
まあでも、普通に嫌か。
こんな奴のために自分の着てた服を使わせるなんて、気分なんかよくはない…よね。
『………あの、気…遣わないでください。パーカー一枚とかでも十分なので』
「はあ!?何言ってんだ手前、ふざけた事抜かしてっと森さんチョイスのワンピースにすんぞ!!?」
寧ろ見てみてぇ気もするが、なんて聞こえたのは多分気のせい。
そんなにやばいのだろうか、森さんの選ぶ洋服は。
『じゃ…あ、シャツとかだけでも……』
「なんでそういう方向にいくんだよ!!気ぃ遣ってやがんのはどっちだ!?服くらいちゃんとしたもん揃えさせろ!!」
『……?…な、んで……貴方がそんな事を…?』
「なんでって、ただでさえ無理矢理連れてきたんだから育ての親の俺がんな事すんのは当たり前で…なんでって、逆になんで俺がそれくらいの事してやらねえと思うんだよ?」
当然のようにして言われた言葉に目を見開いた。
育ての親…織田作が言ってたように、本当に私はこの人のことをそう思ってしまっていいということ?
父親のように…本当の親のように。
けれど、親って何?
どういう存在が、親と呼ばれる存在なの?
『…親…って……ふ、くくらい私、自分でなんとか…』
「……中也に遠慮はいらないよ?何をそんなに驚いているのかは知らないけれど、迷惑だとは微塵も思わないし…それに、まずは君がそれなりに普通の生活を遅れるようになることが皆一番嬉しいと思うだろう」
『………中也、さんも…私に“躾”、するんです…か……っ?』
「…躾……?」
「?…蝶、お前さっきから様子が……」
