第19章 繋がり
『…ただの貧血……です。放っといたら治ります、それより…』
「……後は紅葉君に任せれば十分だから、君はゆっくり休みなさい…針は、嫌だろう」
『!!…ッ』
思わず中也さんに触れていた手に力が入った。
「蝶、貧血って…朝はそんなことなかったよな……?」
『……血、使う能力があって…栄養あんまり足りないの、忘れてました』
ヘラリとしてみせるのに、中也さんの表情は明るくならない。
それどころか泣きそうな顔をするばかり…誰よ、自分なんかのために泣かなくていいって言ったのは。
今度は貴方が私のためなんかに泣いてくれるんじゃない…優しい人。
『よかった…中也さん、なんともなくて』
「てめえはまたんな事を…ッ…今日の昼から、もっと食わせっからな…覚悟しとけ、よ…」
『……手前ってやつ…嫌いです』
「…うっせぇ、無茶しやがった仕置きだ…蝶」
私を軽々と抱きかかえて、中也さんはそのまま立ち上がる。
「まあ、良くなったら意地でも買い物に行くがな…最悪俺に背負われて、だ」
『!…自分で歩「俺の異能ありでしかまだ動けねえ奴が強がんな」う…』
「…………ありがとな…そんなになるまで、俺のこと考えてくれて」
『………中也さんが嬉しいの…蝶、も嬉しいです』
「なら俺は、お前が元気でいんのが一番嬉しいな」
『…もう元気に「なってねえよ阿呆」…』
それから、馬鹿みたいに「なった」と「なってない」の言い合いが続く。
見兼ねた森さんが溜息をついていたけれど、それでもなんだか意地になってやめられなかった。
しかしその言い合いも、その場に響き渡る能天気そうな声によって終息を迎えることとなる。
「いやぁすごいなぁ…これ全部君一人でやっちゃったんでしょ?まさか手伝ってくれるなんて思わなかったからびっくりしたよ…あのまま中也が異能で一掃するよりも見ていて綺麗だったし♪」
『太宰さ「手前、人を顎で使い回しやがって!いいご身分だなぁ司令官様よぉ?」…?…!』
司令官、つまり、こちら側の戦略を練って指示を出していた人。
まさか、それが太宰さん…?
それに、中也さんの異能で一掃することが出来ると言っていた。
この人の異能って…?
『あ、あの……中也さん…の、異能っていったい…?』
「あ?…ああ、俺の異能はな」
“触れたものの重力とそのベクトルを操る”能力だ。