第19章 繋がり
「中也の話を聞きたいか?」
『!中也さん…の……?』
「そうじゃ、彼奴が突然、東京へ向かうと言って聞かなくなったのが昨日の夜……何ヶ月か前に東京の任務で大怪我をしたらしくての?じゃが、その時現地の者に世話になったらしく…それからずっと誰かを探しておった」
理由は誰も聞いてはいないらしい。
けれど、受ける任務がそこに繋がるような、情報収集目的のものに変わっていったらしく…自ら仕事を増やしていったそう。
まだ年端もいかない青年が、必死に何かを探していた。
聞けば両親とももうとっくに別れていて、割と最近に尾崎さんが拾うような形でこのポートマフィアに所属したのだとか。
そりゃあ、中也さんがこの人を信頼するわけだ。
「で、見つけてきたのが其方というわけじゃよ」
『……私…?なんで…』
「それは中也にしか分からぬ…が、あの子もあの子で一人じゃったからな。今では嫌い合ってると言っても太宰のような奴もおるが……童から一つ、お願いしてもいいか?」
中也の家族になってやってくれ。
あの子の唯一無二になってやってくれ。
尾崎さんは、苦笑しながらそう言った。
『…家、族……?…私、なんかじゃ……』
そんな、あたたかさを彼に私が…?
そんな存在に、なれるわけがない。
元の家族だって、皆私を嫌ってた。
『………私は…普通の人、じゃない……ですから』
「…其方は、人よりもずっと優しいだけの、ただの女子じゃよ。人が人でなくなるのは心を失った時じゃ」
この人の言葉には聞き覚えがあった。
こう言ってくれる人は、どこの世界にもいるものだ。
…けれど、死なないだなんて…どう足掻いてもそれは人とは証明できない何かでしょう?
そもそも私は、元々とっくの昔に人という存在ではなくなってしまっているのだから。
尾崎さんと話し込んだ末に言われた言葉に何も返せないでいると、執務室に何かのアラートが鳴り響く。
「これは……侵入者か?」
『侵入者…?』
「…其方はここで待っておれ。童は少し外の様子を確認してくる……これでも、ポートマフィアの幹部なものでのう」
強い人だって、すぐに分かった。
異能力がどうだとか、そんなことは分からないけれど…色々なものを見てきた人の目だ、あれは。
尾崎さんがドアから外に出て、私はその場に取り残される。
しかし侵入者か…こんなに高設備な場所に?