第19章 繋がり
私よりも遅れて浴室から出てきた中也さんが、リビングにやって来る。
しかし私を見た瞬間にギョッとして、すぐさまこちらにかけつけた。
「て…お前っ、髪乾かせ髪!!風邪ひく上に傷むからってさっき言っただろ!!!」
『!…あ……髪気持ちよくて忘れ……』
口にしかけて恥ずかしくなった。
何をつらつらと暴露しているんだ私は、馬鹿か。
「………それなら、髪…俺が乾かそうか?お前がいいなら」
『へ……?…!うん…っ』
こうして始まる妙な習慣。
まさか髪を乾かされるなんて習慣が身についてしまうだなんて思いもしなかったけれど、それでもよかった。
私はどうやら、この人に優しく頭に触れられるのがそうとう落ち着くらしい。
元々撫でられるのは嫌いではなかったが、酷くこの感覚が好きらしい。
だからこそ、少し欲が出てしまいはするのだけれど、それを口にする勇気は無いまま私の髪は綺麗に手入れされてしまうのだった。
それから寝室へ…要するに、中也さんの部屋へと案内され、ベッドを使えと何故だか強要される。
『…いや、あの……私、居候の身で…』
「床のゆの字でも口にしてみろ、明日の朝今日の倍粥食わせんぞ」
『……ソファ「ダメだ」…じゃ、じゃあ中也さんは…っ?』
「俺がソファー使うんだよ、仕事持ち帰ってる分あるし」
『…一緒に寝な「悪い、夜は暫く本当に仕事あるからよ」…私、お手伝いくらいなら…』
本当に切なそうな目を向けられて、私が見てはいけないものであると察した。
マフィアの仕事だ、それも持ち帰りともなれば機密事項だって存在するはず。
出来るわけ、ないか。
「……寝るまでなら、ついててやれるが?」
『!…いいです、お仕事して……中也さん、も早く寝て下さい』
ベッド借りちゃいますね、と言いながらそこに入ろうとすると、やっぱり寝付くまでここにいる、と言い張り始める中也さん。
何故そう言い始めたのかは分からないけれど、何度断っても意見を曲げなくなってしまったため、お願いしますと素直に言った。
すると、私を布団に入れてから、小さい子を寝かし付けるようにとんとん、とお腹に手で布団の上からゆっくり軽く触れる。
…これ、すごい好きなやつだ。
安心するやつ…落ち着くやつ。
何を話すでもなかったけれど、眠気が段々と襲ってきた頃に彼は口にした。
「名前…蝶。…白石、蝶…でどうだ」