第19章 繋がり
言われた通りに中に入ると、彼も少ししてから入ってきた。
まだ育ちきってはいないけれど、鍛えているのが分かるようないい筋肉だ…肉弾戦派のマフィアというのはだてじゃあないらしい。
それにいい鍛え方をしている。
ただ筋肉が主張するだけの鍛え方ではなく、ちゃんと自身の力に変わるような、しっかりとした重い筋肉。
「………何見てんだよ」
『良い鍛え方しててかっこいいなって思って…?』
「お前たまにストレートに言うよな…まあいいけどよ」
椅子に座らされればシャワーを手に取って、低い位置でお湯を出し始める中也さん。
ああそっか、そうすれば最初に身体にかからなくて済むんだ。
「…とりあえず手、出してみろ。温度はこれくらいで大丈夫か?」
『……っと…』
「……ちょっと触んぞ」
『え…っ!!』
右手を後ろから取られて、そのまま少し動かされた。
それにまた肩を跳ね上げてから身体を固くすると、中也さんは動かすのをやめる。
「大丈夫だ、溺れたりしねえから。…動かしてもいいか」
『!!…』
思いきって、首を縦に振った。
肩から力を抜いて、中也さんに従ってお湯に手が触れる。
また身体が硬直したように動かなくなるのだけれど、今回は一人じゃない。
「熱いか?…ほら、大丈夫だったろ」
『……っ、?…大、丈夫……』
「そんじゃ、とりあえずしばらくは顔にお湯かけねえようにしていこう。いつか慣れてきたら次に進めばいい…今日濡らすのは体と髪だけだ」
そんな方法思いつきもしなかった。
まさか洗ってもらえるだなんて思ってもみなかったけれど。
何故だか先にトリートメントを付けられて、そのままそれを洗い流そうと後ろから髪を濡らされる。
力の強そうな手なのに、手さばきは丁寧なものだった。
「折角綺麗な髪なんだ、ちゃんと手入れしてやらねえとな」
『…髪、気持ち悪くない…?こんな色…ですし』
「気持ち悪いと思う奴がいるのか?こんなに綺麗な色をだぞ?俺にはそいつらの頭が理解出来ねえよ」
『……そ、ですか』
だからこんなにも手つきが柔らかいのだろうか…だから、触れられていてこんなにも心地いいのだろうか。
髪を洗ってもらったのなんて生まれて初めてだ。
結局初日は湯船には流石に浸かれなかったけれど、それでも私の中では嬉しい時間が増えて、あたたかくなれた時間だった。