第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
そんなに可愛い事をしてくれる蝶に、身体的にかなり参っていた俺は…今度は俺が、甘えていたのかもしれない。
本気でお前に向かっていけないくせに、お前を俺の元に置いておきたいだなんて、こんな面倒な男ですまない。
蝶の意識がある時には二度目となる、額への口付けをおとして、医務室から立ち去った。
行きとは違ってゆっくりと歩く廊下は、延々と続いているような気さえした。
執務室になんとかたどり着くと、机の上には書き置き。
首領からのものだった。
今日はもう書類整理しか残っていないから、帰ってゆっくり休んでいいよ。
そう書かれたメモを見て、すぐに帰ろうかとも思ったが。
机の端に置いた包みを横目に、残りの書類整理を再開する。
これが終わったら、あいつが作ってくれた弁当を食べよう。
それで帰って……少しだけゆっくりしよう。
自分で決めた通り、蝶の弁当を褒美として仕事を終え、弁当をよく味わって食べた。
ありがたい事に、鉄分の摂取できるような食材が入っていたため、少し気分的にも楽になる。
初めて食べたあいつの手料理は、残念ながら怠さのせいで十分に味わって食べられなかったが、それでも俺の好きな味だということだけは分かる。
本当に健気なやつだ、俺の作る料理の味に慣れたからここまで出来るようになったのだろうか。
自宅にたどり着いて、真っ先に水を飲んだ。
そしてソファに倒れ込み、着替えもせずに意識を沈めた。
最初は息苦しさに何かと思った。
頬が暖かい。そして口内に違和感。
荒い息遣いが耳を刺激する。
しかし目を恐る恐る開くと、一瞬思考回路が停止した。
蝶が…泣きながら、俺の唇を塞いでいた。
恥ずかしいのか怖かったのか、キスをしているのに目を瞑っているそいつは震えていて。
口の中にぬるりとした感覚がして、それがこの少女のものであると判断するのに時間はかからなかった。
まだ俺の意識が戻っている事に気が付かない蝶は、舌の絡め方がわからないのか…怖いのか。
涙を零して止まっている。
気付けば、舌を絡めとっていた。
そして理解の追い付ききらない頭を覚醒させ、驚いた蝶に一声かける。
「…何、してる」
目を見開いて怯えたように固まった蝶だったが、俺の辛そうな顔を見てか、再び俺にキスをする。
何で泣きながらしてんだよ…