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第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ


話は昼間まで遡った。

走って蝶のいる医務室まで向かっている時に、首領は毎度の如く確認をしてきたのだ。

「今回は…“どうする”?」

それは、蝶に分ける血液の量の話。
前にした事のある二回は、俺の任務があったこともあり、十分な量の血を提供する事が出来なかったのを覚えている。

勿論、蝶の容態が良くなりはしたが、いつも俺には無力感が付き纏って離れなかった。

「今日…それから明日も、外に出るような任務は無かったですよね。必要なだけ、取ってください。今回こそ、力になってやりたいんです」

「中原君も無茶するねぇ…蝶ちゃんそっくりだ。いや、蝶ちゃんが似たのかな?」

「はは、大丈夫ですよ。体の丈夫さだけが取り柄なんで」






とは言ったものの、実際に輸血を終えてから思い知った。
蝶を抱き寄せて針を抜いている時、勿論あいつを安心させようとそうしたのだが…

思った以上に体がぐらつく。

自分自身が味わうこの辛さを考えれば、それ以上に血が足りていなかったのであろう先程までの蝶の体を想像して、寒気が消えなかった。

今でこそ少し温かみを取り戻しているように見えるこの少女が、今の俺自身以上の苦しみを味わっていただなんて。

しかし、ついさっき蝶の目の前で気にするな、大丈夫だからと大口叩いて、やっとの思いでこの少女を安心させる事が出来たんだ。
今更こんなところで弱みなんか見せられるか。

だから、本来ならば蝶が移動するのを見届けてから行きたかったのだが、何分今の状態で横になっていないのはキツかった。
それで医務室からとっとと出ようと思ったものの、注射という名のトラウマ行為を乗り越えたばかりのこいつは、相当俺と離れたくなかったようだ。

体が持つ限り、甘えさせてやろう。

そしてそろそろ限界が近づき、視界がクラクラとしてきたため、ついに俺は蝶を説得して学校に行くよう促した。

流石に長く甘えさせていた甲斐あってか、了承してくれた蝶にほっと一息。
それ程までに、余裕がなかった。


しかし、外套を羽織り直して立ち上がった時。
自分の体が重力に抗えなくなりかけた。
危ねえ、今倒れたら元も子もねえのに…

と、そこでふと感じたのは、外套が引っ張られる感覚。

見ると、無意識だったのだろうか、蝶が俺の外套を握りしめていた。
まるで、行かないでと言うように。
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