第19章 繋がり
肩を上下させて再び浅い呼吸を繰り返す。
すると今度はまた頭がクラクラしてきて、そのまま重力に逆らわずに床に倒れそうになった。
すぐ隣に壁があって、なんとかそこにもたれかかる体勢になったのだ。
しかしそれで目に付いた…気が付いた。
いや、気付かれた。
脱衣所に、私が気付かないうちに中也さんが入ってきていたのだ。
「っ!!?手前何を…と、とりあえずタオル巻いとけ!!体冷えるから!!」
すぐ目の前にバスタオルを持って走ってくると、中也さんは背中から私を包み込むように私にバスタオルを被せた。
それにさえ酷く安心した。
何よりも中也さんの優しさに安心した。
また中也さんの方に腕を伸ばして、今度は背中に腕を回して正面からもたれかかる。
「!?また…お、おい?今度はどうし…!髪があんまり濡れてな…」
『っ…わ、かった……ッ』
「…?……えらく身体が震えてんぞ…どうした……?」
『み、ず…っ……嫌ッ、嫌い……こ、わいの…』
中也さんは何かを察してくれたのだろうか、ピクリと指を反応させてゆっくりと私の背に手を回した。
「…あんなとこにいりゃ、怖くもなるわな……!それでさっき…!」
私がいつも水に入れられていたことを、多分この人は知っている。
しかし恐らく、彼は知らない。
この世界での私の最初の死因が、溺死や窒息によるものだった事を。
能力を使っても、いくら抗っても生き延びられなかったのが、あの施設の水の中であった事を。
それが原因で、殺され始めることになったということを。
「…………俺と入るの…は、嫌じゃねえのか?…お前、女だろうが?見た目が今小さくても、男に見られていい気はしねえだろ」
『…中也さんなら、別にいい……気に、しない…です』
「……今からでも入れそうか?無理なら明日の朝でも構わねえが」
『!……え…?』
彼の突然の提案に目を丸くした。
「追い込んじまった俺にも責任はある。…俺がいて少しでも落ち着けるんなら、それくらいの事させてくれ」
少し顔を上に上げると、真剣な目を合わせられ、真っ直ぐに自分を見てくれるその人に心奪われそうにさえなりかけた。
彼は私を心配してくれているだけだ、とすぐにそんな甘ったれた考えは捨てきって、小さく頷いて目を逸らす。
私より年下なのにな、なんて。
「…ただしタオルだけ巻いててくれ、俺がやべえ」