第19章 繋がり
「ここが一応部屋…になる予定だ。まだ趣味が分からなくて家具も何も揃えてねえけど……とりあえず今風呂沸かしてっから、溜まったら先に入れ」
『…中也さんは一緒じゃな「なんで風呂に一緒に入んだよ俺が!?」……です、ね』
流石に無理があっただろうか。
相手は恐らく私のことを思ってくれての発言なのだろうけれど。
それでも少し、懸念せざるを得ない場所だ、浴室というのは。
そんな事に怯えてどうするんだって我ながら思うけれど…入れるようにならなくちゃ。
「あんま人に肌見せねえようにしろよ?なんか心配になってきた…!溜まったな。入ってこい」
『中也さんが先に…』
「家主の俺が言ってんだ、入れ先に。…お前が上がってきた時に俺が万が一にも寝てたら嫌だろ」
『……はい』
タオルや洗髪料について説明を受けてから、脱衣所に一人になる。
明らかに女性用の洗髪料が揃えられていた上に全てそれらは新品だった…そして恐らくかなり中身は上質なもの。
六歳児相手になんというものを用意するんだ、あの人は。
なんて少し驚きもあったのだけれど、普通の家よりは少し広いと思われる浴室に入って、少しうるさくなる心臓を上から手を当てて抑えようとする。
落ち着け…お風呂だよ。
自分にそう言い聞かせながら、少し浅い呼吸を繰り返して浴室の扉を閉めた。
それから最初にシャワーからお湯を出すと、必然的にそれは私の身体に降りかかる。
『ッひゃ……っう…』
肩を思いっきり跳ねさせてから暫く硬直し、慣れてきたらちゃんと呼吸を続けた。
大丈夫、浴びてるだけ…大丈夫。
手っ取り早く済ませてしまおう、と、髪を濡らそうと決意を固める。
しかし、濡らしかけたところで首を竦めてしまって、結局は顔を濡らすことを拒むように、それすら実行できなかった。
ただ出していても無駄なのですぐにシャワーを止めて、試しに湯船を見つめてみる。
……だめだ、とても無理。
溺れないって分かってるのに。
そういうものじゃないって、分かってるのに。
『…っ…あ……ッ』
少し指先で中に溜められたお湯に触れると、思わず腰が抜けてその場に座り込む。
お湯はあたたかいはずなのに、寒気すらしてきた。
流石に危険を感じて外に出ようにも、足が竦んで立てそうにもない。
仕方なしに能力を使って、無理矢理体を脱衣所のマットの上へ移動させた。