第19章 繋がり
微かに鉄のにおいのする部屋で意識を取り戻した。
ああ、なんだ夢か。
誰かが助けに来たとか、落ち着く場所に出会えたとか、綺麗だなんて言われたとか…そんなの纏めて全部。
だって、また血のにおい。
今度は何の実験だろう、何を見つけるための“心臓を止める血液”だろう。
目を開くのも億劫になって、しかし身をよじるのも怖くって、夢の世界に逃げていたいと心の底から渇望する。
外の世界には、素敵な人たちがあんなにもいた……夢だけれど。
なんで今更、こんな夢を…ああ、だけど結局、また迷惑しかかけてなかったじゃないか。
ごめんなさい、こんな私で…ごめんなさい、何もお返しできなくて。
ごめんなさい、私なんかと、関わらせてしまって。
『……ん、なさ……ちゅ…やさ……』
「!手前、起き…っ!?泣い…!!?」
「はぁ?何を…!君、どうしたの?目、覚めた?どこか身体に異常はないかい??」
身体をさすられて、それが現実のものであると認識すると共に、“嫌だ”という感覚が頭の中を支配した。
『!?触らなッ…、やだっ…!!……ッ、!?きゃっ!!?』
能力で抜け出す事が出来なくて、いつものように自力で脱出しようと起き上がって移動した。
はずだったのだが。
手をつこうとしたところに床はなく、そこが寝台の上であったのだと理解した頃には、水の外で私に体を制御する術は無かったのだ。
能力を使ったら、またあの電気が流されるから。
しかし目をつぶって衝撃に耐えようとしたのだけれど、私を襲ったのは痛みではなく、人の肌の感触とあたたかさだった。
「……っぶね、心臓止まるかと思った…!おいどこか打ってねえか!?痛ぇところは…」
『…ッ?……痛くな………え…っ、…なんで…』
少ししてから目を開けて、私の身体を受け止めている人物を目視すると共に、頭の中がぐるぐるし始める。
そこには綺麗な目とクセのある髪をした青年の顔があったから。
夢の中に描いていた、あの中也さんがそこにいたから。
「なんでってこっちの台詞だっ、なんで手前泣いて『ッ!!…ごめ…、なさ…っ』…あ?…お、おい?」
「……女の子に対してそんな口の利き方してちゃあ、そりゃあこの子も怖がっちゃうよ。ねえ?…君、こいつの喋り方怖いでしょ?怖いって言ってもいいんだよ?」
『!…太宰、さん……?』
隣に現れたのは太宰さんだった。