第19章 繋がり
汚いと、穢いと言われ慣れてしまったこの身体には…私には、とても遠い言葉だったはずなのに。
どうしてこの人は何度もそう言うのだろうか。
「……もう良い、分かった、中也…其方……ああ、なんという事じゃ、もう少し早くから女子と関わらせていれば…」
「何言ってるんですか姐さん、俺は別に女なんかとは一緒にいてぇとは思わないってよく知ってるでしょうに」
中也さんの放ったその言葉は…否、その言葉も、本音だろう。
あれ、それならなんで私を連れてきた?
織田作は確かに一緒に住むつもりでって…
中也さんはきっと優しい人だから、もしかして嫌々ながらに私の事を面倒みようと思ってる…?
「中也…今すぐ訂正せい、その言葉」
「はい…?訂正も何も、俺は元より家では一人…で……」
『………あ、の…無理、されなくて大丈夫です。……助けていただいただけでも、感謝しきれないほどですから…その…ごめんなさい…』
今日は森さんに医務室をお借りして、泊まらせていただきますね。
掠れたような声でそう言ってから、今度はちゃんとドアから出て行った。
中也さんは何かに気付いて止めようとしたけれど、多分ここでちゃんと別れておいた方がいい。
自分のプライベートの半分を…そんな大切なものを、無条件で赤の他人に明け渡せるだなんていう方がすごい話だ。
負担をこれ以上かけさせるな、これが多分、一番いい。
「!…お前……」
「おや?君は…中也と一緒にいるんじゃ……?」
『へ…?……あれ、織田作と太宰さ…っ?』
クラ、と立ちくらみをするような感覚だった。
着物なんて慣れてないし、人に囲まれるのだって久しぶりだし……良くしてもらうのなんてこの世界に来て初めてだったし。
今もだけれど、頭で全然ついていけなくて…織田作と太宰さんが、何故だか心配そうにこちらに駆けつけてくれる理由だって分からなくて。
何より私を連れ去ってくれた中也さんの事が一番訳が分からなくて。
「おい、お前!!」
「君!!!」
どちらかに、自力で支えきれなくなった身体を抱えられてるのは分かった。
だけどダメなんだ。
そうだ、私と…私が関わるから、また誰とも離れたくなくなってしまう。
離れたくない…離れたくなかった。
皆と一緒がいい……普通がいい。
『殺…して……ッ…?』
意識が朦朧とする中、私の願いはそれだけだった。