第19章 繋がり
「ずっと…って……」
「俺はさっきここで出会ったばかりだが、恐らくそれよりもっと前からここにいただろう。座っていた…ほら、ちゃんと見ていてやれよ。えらく言動は大人びているが、誰だって一番見ていて欲しい奴に見てもらえるのは嬉しいことだ」
『だ、だから織田作…?何言って……』
「否定したところで、あれだけ初対面の俺の目の前で中原の事ばかり聞いてきたお前に説得力はねえぞ」
ギクリと図星になって、中也さんから顔を背ける。
視線が刺さるのを気にしないようにと無心になろうとしていれば、織田作が私を中也さんの方へ差し出すように腕を動かした。
「…言われなくてもそのつもりだっつの。……こいつ見ててくれて助かった、ありがとな」
『……ッ!?…~~!!?』
そのまま立たせてまた手をつなぐものかと思っていた。
けれど、そうじゃなかった。
織田作よりも背丈の小さな彼は、私をそのまま横抱きにして受け取ったのだ。
……別に深い意味は無い、けれど、彼はこのような事をするような人だっただろうか。
「…よく見てやれよ。じゃあ、俺は森さんに用事があるから」
『え…っ、あ、織田作ッ!!……ありがとう…』
「!いや、俺もお前と話せてよかった、こちらこそだ」
中也さんの肩から顔を覗かせてそう言うと、織田作は手を振りながら医務室の中へと入っていった。
本当に不思議な人…強いだろうに、マフィアであるはずなのに、血の匂いもしないような。
似たような人を、知っている…マフィアのくせして争いごとを好まない、人を殺さないような人を。
きっと彼も、ああいうつよい人だ。
意志を持った、つよい…
「おい…手前、姐さんのところにでも行って座らせてもらっておけっつったろ」
『……中也、さん…待ってた』
「…ありがとな……けど、こんなところで座ってても体冷やすぞ。その下何も着てねえんだから気を付けろ」
『え……?』
「………女が体冷やすなっつってんだ」
その言葉で気が付いた。
そうだ、この人はさっき、森さんから私の事を聞いたはず…なのになんで、距離ができるどころかこんな至近距離に…
『…気持ち悪く、ないの?』
「全然?寧ろ、手前と出逢えてよかった…」
『私と…?……っ!?じ、自分で歩けますって…!』
「阿呆、甘えとけそこは。手前は今餓鬼なんだから、大人に甘えときゃいいんだよ」