第19章 繋がり
「………なら、中原を父親のように思えばいい。母親…は流石にやめてやれと言うが、一緒に住む算段は立ててあるようだし、あいつは多分本気でお前と住むつもりだぞ」
住むどころか育てる気だ。
織田作の言葉で、思っていたよりもあの人が本気で私と住もうとしているのだということが分かった気がした。
…それにしても、中也さんが父親って。
『…織田作って、お兄ちゃんみたいってよく言われない?』
「生憎お前くらいの年の子供とはそこまで縁がなくてな…父親のような扱いならよく受けはするが?」
『へえ…ねえ、その体勢しんどくない?立ってても……ッ!?』
立っていてくれてもいいのに。
言おうとすると、ポン、ポン、と軽く頭に手を置かれた。
突然の事態に肩を跳ねさせて身体を硬直させるも、彼の大きな手は私の頭を撫でるまま。
『な……っ、にを…ッきゃ、……っ?』
それからワシャ、と撫で方を変えられたかと思えば、また元のような撫で方に戻る。
「そう警戒しなくてもいい。俺がお前に何かをするようなことでもあれば……多分、真っ先に中原に殺される」
『え…っ、………あ、の…なんで撫でて…?』
「ん?……ああ…どうしてだろうな。なんとなくだ…えらく可愛らしい反応をするじゃないか。好きか?撫でられるの」
『!!………嫌いじゃ、ない…』
「そうか…」
ふ、と織田作が笑ったような気がした。
この人は、随分と私の扱いが上手いようだ…兄みたい。
いや、違う、兄なんかじゃなくって…理想の兄のような。
安心する、頭なんて撫でられるの。
ああ、でも中也さんはきっとこういう人じゃないしなぁ…。
……だから、なんでまたあの人の事考えてるのよ私は。
織田作の手がすっと離れて、彼がその場で立ち上がる。
が、それと合わせて彼は私を横抱きにして抱き上げた。
『…………!?ちょっ……何して…!!?』
「少し待ってろ」
そして織田作のその言葉の直後、医務室の扉が開かれて、中からは話を終えたであろう中也さんが…?
この事が、織田作には分かっていた…?
やけにタイミングが良すぎたような気がする。
なんて考えていたのも束の間、物凄い視線が私に注がれていることに気が付いた。
「な、っ…て、てて手前ッ……お、織田と何を…!?」
『?』
「安心しろ、取ったりしない……ずっと外で待ってたぞ、この子」