第19章 繋がり
「ここだと思って来てみりゃ…手前そういやさっきも突然いなくなったな?瞬間移動みてえな異能か?」
「…中也君、少し彼女と二人で話があるから、出ていてもらってもいいかな?」
「?…話……って…わかりました」
うん、と言う森さんの声の次に扉が閉まる音が聞こえて、中也さんが去ったのが感じられた。
「さっきの話の続き…聞いてもいいかい?どういう事か………見たところ君は、中原君の事が嫌いなわけではないのだろう?それに、悩み事がなんというか…口調もだけど、考え方そのものが“やけに子供らしくない”」
『……私が、なんで実の親と一緒にいないかとか…なんで、研究施設の被検体になってたのかとかって、知ってますか…?』
「全然知らない…中也君ならもしかしたら調べていたかもしれないけれど、彼からはあそこに捕まってた君を連れて帰ってくるとしか聞いていなくてね。我儘みたいな事言って飛び出してって、本当に連れて帰ってきちゃったからびっくりしてるところだよ」
『………えっ…それ、だけ……?』
思わず間抜けな顔になって布団から顔を外に出した。
「うん、それだけ。何やらここ一ヶ月ほど、ずっと人探しをしていたらしくてね?それで連れて帰ってきたのが君…本当にそれだけ」
それならば尚更分からない、頭がおかしいのではないかあの人は?
そう思えてしまうほどに、シンプルすぎる動きだった。
私を探してて、私の居場所を突き止めて…連れ去った?
なんで?
聞きたいことは山ほどあるが、ただ一つわかるのは、普通の人間があの施設に侵入することはおろか、下手を打つと死んでしまうことだって私はよく理解している。
それでもそんな所にやってきて…こういう表現は自分勝手なのかもしれないけれど、確かに彼は私を救い出してくれた。
『…私の能力……というより、体質。説明します』
そこのナイフをお借りしても?と問えばいいよ、と了承されたため、能力でこちらに移動させて手にそれを持つ。
そしてそのまま軽く手の甲を切りつけた。
勿論驚いていたし何をしているんだって怒られかけたけれど、それよりも驚きの方が強かったらしい。
話してみてもいいんじゃないかと思った。
ここには私を苦しめられるような力もない。
それに中也さんが最初に紹介して下さった方だ。
いつか彼にも…ああでも、“ああいう”目では見られたくないなぁ…