第19章 繋がり
尾崎さんの声にピタリと足を止めて、中也さんはこちらを振り向く。
それから私の手に目線を向けられて、それにハッとして手を思わず隠した。
「手前…」
『ぁ…な、何でもない…です、ごめんなさ…ぃ』
「………居てぇんなら、そう言え。…迷惑じゃねえし、元よりしてやれることはしてやるつもりなんだ…どうなんだよ」
『え……!』
顔はよく見えなかったけれど、口調は相変わらず荒っぽかったけれど、それでもまたこっちに歩いてきて…また、中也さんは私に手を差し出してくれた。
「掴んで良いのじゃぞ?なんならそのまま一生連れ回してやるが良い」
「姐さんッ…!」
この人と手を繋ぐのは、なんだか心地良い。
嫌いじゃない…というより、一緒にいたい。
勿論他の人といるよりはいくらか少し安心するからというのもあるけれど、なんというか一番落ち着く……気がする。
「…着替えを覗く趣味はねえからな、言っとくが」
『……こんな身体の子供に気、使わないでください』
「こんなって、手前な…まだ餓鬼でも女だろ、嫌なもんは嫌ってちゃんと言え」
『嫌って……』
言ったら、やめてくれるのか?この人は。
そう言っているのか……けど、確かに私が怖がることや嫌がる事はしないと言っていた。
彼の紹介してくれた森さんも、私の怖いことはしなかった。
無理矢理お粥は食べさせられたけど、それは私の身体を気遣っての事だ。
「…どうした?やっぱり外に『や、っ…嫌……です』…じゃあここにいる」
『!……ほ、んと…?ほんとに、ほんと?』
「本当だっつの、嘘ついてどうすんだよ?」
何故だろう、この人が一緒にいてくれることが、心底私には嬉しかった。
綺麗な服を着せてもらえるとか、美味しいご飯が食べさせてもらえるとか…それよりもずっとずっと、この人に見てもらえることが嬉しくてたまらなかった。
「嬉しそうじゃのう………にしても、こんなに可愛い女子に名前も誕生日もないとは、それは少し寂しいものがある。両親も両親じゃが施設の奴らもそうじゃ、何故怖い思いを…自分の名前にしたいと思うようなものはないのかえ?」
尾崎さんからの質問に、頭の中が一瞬真っ白になる。
澪はだめ…汚しちゃ、だめ。
私の名前なんて、所詮は零で通ってて………こんな化物には、モルモットナンバーくらいが丁度いいって…
『………いらない、です』