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第19章 繋がり


『あ…この人……』

「ああ、こいつは大丈夫だ。放っておくかそのまま踏みつけてやりゃあいい、寧ろ踏んでやれこんな奴」

「まだ書類の事根に持ってるのかい君?器の小さい男は女の子に逃げられますよ〜っと…ねぇ?」

ひょこっ、とすぐ隣に現れてから、首元に腕を回して抱き着いてきたその人、太宰さん。

本来ならばスキンシップの一環として考えるのが妥当なのだろうけれど、人から触れられることには敏感になっているこの身体。

『ッ!?や…っ……』

「!おい、とっととそいつ離せ太宰!!」

「…怖がらせてしまったかい?………にしては、かなりやばい事しちゃったかな私…?」

ごめんね、と手を伸ばされるも、それさえもが怖いものに見えて堪らなくて、拒むようにまた布団に包まった。

『ごめ…なさ……ぃ…ッ』

「…謝るのは私の方だ、ごめんね。君は謝らなくても大丈夫だよ」

「そうだぞ、元はと言えばこの木偶が…」

『……っ?』

布団の上からだから確かじゃない。
けれど、確かに今、頭に柔らかい感触が伝わった。

ゆっくりと撫でるようなその動きは懐かしいもので、そんな風に扱われたのももうずっとずっと前の事で。

「てめッ、いいからとっとと仕事に戻りやがれ!!」

「あーあー、そんな怒ってるとこの子に怖がられちゃうよ?優しくしてあげなきゃ……ま、脳筋には無理か♪」

「死に晒せぇえええ!!!」

「明日にでも喜んで♪じゃあまた明日ね!」

明日にでも喜んで…死ぬ?
何だったんださっきの人は…なんなんだ、この感情は。

シンプルな感情ほど、名前を付けるのに葛藤する。

自分の髪を手で押さえて、キュ、と唇を噛みしめた。

「…あの野郎はどこかに行ったぞ、安心して出てこい……暑いだろそこ」

言われた瞬間にガバ、と布団に隙間を開けて顔だけ出した。

「……プッ…、ダルマ見てえ…ッククっ…」

「こらこら中也君、女性にダルマなんて失礼だよ?どちらかというと…まだ早いけど雪だるまちゃんじゃあないかな」

「それ変わってないです…ッはは、やべぇこいつ面白ぇ…!」

何故だか馬鹿にされているという事だけはよく分かった。
二人揃って失礼な。

無意識に先程の感触が忘れられずにまた髪を手で柔らかく触る。

『……さっきの人は…?』

「もうすぐ死ぬ。俺の手によって」

「君それ何回失敗してるのさ?」
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