第19章 繋がり
「森さん、さっきの任務の件なのだけれ……ど………」
ガラ、と音をゆっくり立てて医務室に入ってきた人物が一人。
男の子だ。
知らない人の登場に肩を跳ね上げて驚いて、思わず寝台の上で即座に布団に包まった。
男の子…中原さんと同じくらいの年の人だろうか。
少し大人っぽく見えはするけれど、なんというか一番頭の回転が早そうな。
「ああ、もうまとめてきてくれたのかい?」
「はい、勝手に独断行動で東京まで突っ走って行った奴に手伝わせまして」
「あはは、またか…怒ると思うよ?“中也君”」
森さんの発言にチラ、と顔を覗かせた。
中也君…中原さんの事だ。
この人は中原さんと親しい人…?
それなら、悪い人じゃあない……?
何故だか自身の中の基準が中原さんになっているのを感じてしまい、余計に自分が分からなくなった。
「大丈夫ですって、何かあったらその時は三倍以上にして返しますから……と、初めましてだね。可愛らしいお嬢さん、私の名前は太宰治!あのちびっこマフィアに拉致られてきたんだって?可哀想に…」
『へ……!?~〜〜!!!?』
突如として至近距離に現れた少年に後ずさりするも、寝台のフレームに到達してしまいすぐに逃げ場はなくなった。
しかしその時だ。
「なあ森さん!!ここにあいつ来てなかっ…〜〜〜!!?なっ、にしてんだ手前ええ!!!?」
「ぶへッ…」
『ひゃッ!?』
突然また扉が…それも今度は乱暴に開けられたかと思えば、目の前に迫ってきていた男の子が吹っ飛ばされ…というよりは、蹴り飛ばされた。
そして目の前にまた彼が現れる。
「おい、大丈夫か!?あの変態糞野郎に何かされなかったか!!?」
『あ、あわッ…!?な、かはらさ……っ』
「!!…もっかい」
『へ…?な、何が「もっかい呼んでみろ」えっ…な、中原…さん』
人差し指を立てて真剣な表情になる彼に言われて、とりあえず呼んだ方がいいのかと判断してしどろもどろになりつつも中原さんと口にした。
「まさかもう呼んでくれっとは…いや、だが中原さんって気持ち悪いな。下の名前で呼べ、これからは」
『……?中也さん…?』
「…そうだ、それでいこう!!余計に気に入った!!」
ぱああ、と分かりやすく表情を輝かせる彼…もとい中也さん。
何故だか不思議と嫌な気持ちにはならなかった。
「あ、あの…私の事を……」