第19章 繋がり
話を聞いてみると、先程の彼…太宰さんは自殺が趣味というかなり変わった人らしい。
ただし、今までに幾度となく挑戦してきた自殺だけれど、何故か運が働いて奇跡的に助かってしまうらしい。
他殺の場合も然りだ。
そしてもう一つ分かったことが。
「中也君もめげないよねえ?」
「奴が死ぬ事以上に嬉しい事なんか無いですよ俺には」
「悲しいくらいに一途だね君も」
中也さんと太宰さんは犬猿の仲であるらしい。
なんとなくだけれど、ある意味では仲が良さそうに見えてしまうのだけれど、多分本人同士の間では嫌いなのだろう。
なんというか、分かりやすい人だ。
「ああそうだ中也君、この子の食事についてなのだが…暫くは消化のいいものを少しずつ摂っていくようにしようと思う。どうも食べ物を食べるという習慣から何年も遠ざかった生活を送らされていたらしくてね」
「!…わかりました、それなら今から何か作ります」
「『えっ』」
私と森さんの声が初めて重なった瞬間だった。
「えっ、て…」
「い、いや中也君?……君、作れるの?出来るの!?料理!!」
確かにそれも思ったけれど、私が驚いたのはそこじゃない。
見ず知らずの私のために、なんでそこまでしようとするの?
わざわざそんな風に手を煩わせなくても、放っておけば…
「卵粥とスープでいいでしょう?それくらいなら簡単そうですし……それでいいか?」
『!………なんで、わざわざそんな事…?』
「え…なんでって……なんでだろうな?まあ、ただなんとなく…?」
悪意なんか微塵もない…それどころか明白な考えもなく、私にただ良くするのか?この人は。
余計に訳が分からない……けれど、押し付けがましい善意より、こっちの方がよっぽどいい。
居心地がいい…それに何故だか疑えない。
目を丸くしていると中也さんがこちらに顔をゆっくりと近付けてくる。
「手前…」
『!!…え、あ…は、はいッ……!?』
サラ、と髪に触れられて、気づいた時には中也さんはまじまじと手に取った私の髪を見つめていた。
変な色だから?
気味が悪い…?
「………前髪切った方が良いぞ、絶対。その方がよく顔が見える」
『…ッ…?…か、お……?』
思いがけない言葉にまた驚かされた。
「さっき言っただろ?折角綺麗なんだ、隠れさせてても勿体無ぇよ」
胸の奥がキュンとしたりなんかして。