第19章 繋がり
「どうした!?どこか具合でも…」
『違…ッ』
どうしよう、折角用意してくれたのに。
折角私なんかのために誰かが作ってくれたのに。
『や、っぱり無理…です……』
「え…あ、おい!?手前どこに…っ!!?」
能力を使ってその場から移動し、どこへ行くでもなくさまよって、見知った部屋にたどり着いた。
医務室…そうか、さっきのここは医務室だったのか。
ノックをすれば中から森さんのものと思われる声が聞こえ、無言で扉を少し開けてから中の様子を伺う。
「!君は…どうしたんだい?中也君と一緒に夕食を食べに行ったんじゃ…」
『……食べれない…の。もう何年も食べてなく、て…ごめんなさい…、ここにいても、中原さんに顔向けできるような人間じゃないんです……ッ』
「……顔向けなんて考えなくていいさ、ゆっくりでいいのだから。いきなりこんなところに連れてこられて戸惑っちゃってるかもだけど…中也君は本当に、彼の勝手で君を攫いに行っただけなんだよ?」
『!…さっきも、それ……なんで、私を…?……なんで私の事なんか知って…』
明らかに、彼は私を目的にあの研究所に現れた。
私を連れ出してから、跡形もないほどにあの研究所は彼の手によって破壊されたから。
しかしあの柳沢が、私の情報を外に漏らすような事はしないはずだ。
「それは…それは本人に直接聞いてみればいいよ。もう賢そうな君なら分かってるかもしれないけれど、彼は口ぶりはああだが悪い子じゃあないからね」
それは本人に聞くとして、今は食事の方だ…
言いながら森さんは、私の体に目をやった。
「…栄養が十分に摂取できているとは思えないくらいの細さではあるね。……何年も食べてないって、まさか点滴か栄養の投与だけで生かされてきたって事かい?」
流石は医師だ、話が早い。
小さく頷くとそっかそっか…と優しい目になる森さん。
子供の身体だからだろうか、相手の気持ちが感覚的に分かりやすいような気がする……この人も、きっといい人だ。
「けど、さっきの様子からしてみて点滴は怖いだろう?…消化のいいものから食べて、徐々に身体を慣らしていこう。ちょっとずつでいいから」
『…針、刺さないんですか?』
「君のような可愛い女の子に怖い思いはさせたくないのだよ」
『…………可愛い女の子なんかじゃ、ないですから』
込み上げそうになった涙を堪えた。