第19章 繋がり
まさかの指示に、ついさっき知り合ったばかりの男の子と食事をする羽目に。
「歩けそうか?」
『…だいぶましになっ……!』
「っと…まだ筋肉が慣れてねえんだろ。あん中にいたらそうもなる…これで少しは楽になるか?」
よろけた私の体を受け止めた彼が私の方を見て“重力操作”、と呟くと、身体が軽くなって自分の力で…というよりは、誰かの助けなしでも立てるようになった。
『何これ…凄い…… !』
「驚いたかもしれねえが、怖がらねえでほし…………はっ?」
『超能力!?身体軽いっ、久しぶりに自分で歩…ッ!すみません、調子に乗っ…』
「あ、謝らなくていいが…手前、怖くねえのか?こんな能力が?」
『え…だって凄い能力で、私のみたいな気味の悪い力じゃ……なんでもないです』
口にしかけて、舞い上がっていたところでハッとして、やめた。
「十分俺のも気味悪いだろって…んな反応する奴初めて会ったぞ?まだ異能力なんか表舞台じゃあ希少なもんだし、煙たがる奴らの方が多いし……って、まさか手前異能力持ちなのか?」
『…変な力なら』
「……そうか。…ほら着いた、ここが食堂」
私と、恐らくこの人の分。
食事が用意されており、食べられるようになっている。
しかしこの何年間か、私は食事という行為を一切行ってきてはいない。
毒が入っている分には大丈夫だけれど、そもそも食べる気にはならないのだ。
『…食べなきゃダメ…ですか?』
「!…食え。そんなほっせぇ身体じゃダメだ」
『……』
別にこうなりたくてなったわけじゃないのだけれど。
ダメって…やっぱり私はいけない子…?
貴方も、私の事を“そう”見るの?
言われた通りに従って椅子に座らせてもらうと、一般的には物凄く美味しそうと言うべきであろう品々が揃っている。
『…お箸……?』
「あ?箸がどうした」
『……ここ、ヨコハマって…あ、そっか、日本語…』
「だから、それがどうしたってんだよ?」
『ここ…日本だったんですか……?』
言うと、目を点にさせては?と間抜けな声を出す中原さん。
「そりゃあ日本だろ、手前がいた所も日本だし、ここも…って、まさか知らなかったのか?」
コク、と頷くとさらに目を見開いて驚く彼。
仕方ないじゃない、この世界に来たその瞬間から、私は研究所の中で生活してきたのだから。