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第19章 繋がり


結局無理矢理彼の上着に包まれて、そのまま本当に背負われて外に出た上に横浜まで連れていかれてしまった。

道中、どこかドキドキしつつも本当に信用していいのかなどと心配になっておどおどしていると、荒めの口調からは想像も出来ないような優しい声色で何度も大丈夫だと口にする彼。

いい人…なの……?

まだ子供とはいえ、今の私の体からしてみたら大きな背中が安心させてくれる。

マフィアが背中なんか向けて…この人本当にマフィアなの?
本当に信用してもいい人なの?

拠点に到着したところで、真っ先に連れて行かれたのが森先生…後にポートマフィアの首領となる、大恩ある人の元だった。

「発見してきました…一応どこか衰弱しているようなところがないか、診ていただいてもいいですか」

私を寝台に座らせてから、私をまじまじと見つめる大人の男の人に丁寧な敬語を話す彼。

「いやはや、まさか本当に攫ってきちゃうなんて…怖かったろう?突然こんな気の強そうな男の子に攫われて……ああ、僕は森鴎外。こう見えても医者でね?どこか痛いところとか、変に感じるところはないかい?」

『ぇ…っ、と……な、いです…』

「そっかそっか。それじゃあ色々と質問をしていくね?名前と…出身地なんて、分かるかな?あと血液型と生年月日」

『………です』

え?と気の抜けたような声を出した森さん。

「ないって…何が……?」

『名、前…も、出身も…誕生日も血液型も、ない…です…』

だって私は、ヒトじゃないから。
だって私は、化物だから。

白石澪は、もう私の名前じゃない。
零が生まれて、もう戻れなくなっちゃったから。

あの人の付けてくれた澪を、汚したくない。

「……そ、っかぁ…せめて歳と名前だけでもと思ったのだけれど………血液型調べたいから、採血しても大丈夫かな?何かあった時に輸血を…」

採血、それから輸血という単語に目を見開いて、中原さんの上着を思いっきり握りしめて自分の身体を守るように包まる。

『…い、やです…ごめんなさ、い……』

「……そんなに怯えなくてもいいよ、無理強いはしないから。けど、万が一そんな事態になれば『お願いします…なん、でも言う事聞きますから…ッ』………じゃあ、まずは食事に行ってきなさい」

突拍子もない支持に、思わず間抜けな顔になった。

「中也君と、二人で。僕はまだここにいるからさ」
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