第19章 繋がり
「あまり動じないんだな?子供の割に」
『……何するつもり?』
「君がここに現れた瞬間の事…大きな輝く扉の中から君がここへ現れた。あの映像は、世に知られると拙いんじゃあないか?…記憶もなければさぞ不便だろう」
『…そんな言葉並べて脅されたところで、私は……ッ、あ…っく…!』
喉元に突き立てたナイフを、ただのモルモットを見るような眼差しで切りかざした柳沢。
浅い浅い傷が、大きく喉元いっぱいに広がって血が流れる。
それがいけなかった。
余計に彼の興味を引いてしまったのだ。
「!ほう、なんだなんだ、面白いじゃないか…傷が治っている……決めた、今日からお前は被検体だ!丁度探していたんだ…身よりの無い異能力者……化物じみた能力を持つお前のような存在を!!」
『!?な、に言って…ッ!!……く、るし…っ』
ガッ、と首にワイヤーのようなものを巻き付けられ、そのまま力いっぱい絞められる。
抜け出そうにも、これ以上下手に能力を見せない方が得策だ…多分この世界は、“そういう世界”。
「もう一度聞く、モルモット…俺の研究のために協力……否、服従しろ」
『そ、んなのに従うはず……ッ!!?〜〜〜〜〜ッ!!!!!…っ、あ…ぁ…っ』
首に巻き付けられたそれから大量に流された電流。
それで意識を失ってから、次に目覚めた時からはもうあの生活が始まっていた。
時には資金稼ぎのためや第二、第三の“モルモット”収集のために手を血に染めて。
柳沢が私の体質に対抗し得る物質を見つけ出すのはとても早い段階で、私の未知の脅威となったそれが抑止力となり、逃げ出すのはおろか、本当に言う事を聞かざるを得なくなってしまったのだ。
最初に死んだのはショック死だった。
しかしそれで肉体の再構築が始まり、それを見た柳沢の研究…及び実験はどんどん激しさを増していく。
殺したところで死なないのだから。
他に宛も何も無いのだから。
頭に思い浮かぶのはかつての世界で出会ってきた仲間…否、こんな私を仲間だと言ってくれた人達の顔。
なんて恵まれた環境を自分から手放してきていたのだ、と後悔したところでどうにも出来なくなってしまった。
そして何度も何度も死んでる内に、柳沢は遂に“私の身体の中から”反物質エネルギー、そして反物質を発見したのだ。
そして何故だか、それ以降私は研究で殺される事はなくなった。