第19章 繋がり
『ぁ…っ、ま、って千葉君、触らな…ッ!』
「痛いところはなるべく刺激しないようにするから、まずは血を落とし………白石?」
『や、だ…血……刃物、嫌い…やだ、やだッ…!!』
家事をしていても、思い出さなかったはずなのに。
私の体質がバレて、皆あんな奴みたいに私のことを弄び始めるんじゃないかって…気持ち悪い化物だってことがバレちゃうんじゃないかって。
そんな考えが頭に浮かんで、自分から流れ出た血が久しぶりに怖くなった。
ううん、今まで強がってただけで、ほんとはずっとずっと怖かった。
血が、刃物が、痛いのが……だからあの人は私に銃をくれた。
だから体術を身に付けた…だから、ナイフは使わなかった。
「落ち着け白石!!止血するか…ら……?」
「…傷……どこだ…?」
『!!!…ッ、触、らな…っ!!』
「!違っ…そうだ、白石……!!?」
慌てて無意識の内にテレポートで千葉君と岡島君の元から抜け出して、教室の隅に背中を向けて警戒する。
見られた…血を洗われて……その下に、本来あるはずの傷がもう存在していないのを。
『…来ない、で……っ』
座り込んだまま目を鋭くさせて、息を荒らげて前を見据える。
「ま、待て白石、落ち着け!!事情を話せば分かっ『前原君もこっちに来ないで!!…こっち、見ないで…!』…ごめん、俺がちゃんと頭に入れてりゃこんな事には…」
『い、いから…ッ、ごめん、今日もう私帰る』
「!?帰るって、そんな状態で一人で帰せるわけが…」
軽く、だ。
ほんの少しの力で腕を掴まれた、ただそれだけ。
だけど私からしてみれば、それらは恐怖の対象にほかならない。
『ひ……ッ、あ…____』
「!?白石!!?」
あいつに捕まったのと状況が重なって。
千葉君の姿があいつに見えて、それで抗うことも出来ずに、色々な記憶が頭の中を過ぎっていった。
電源がプツリと切れてしまったかのように目の前がチカチカしてからすぐに真っ暗になって、体が床に叩きつけられたのが分かる。
最後にまだかすかに感覚の残っていた耳元からは、私を呼ぶような声が聞こえていた気がした。
あの人が付けてくれた名前…私の大好きな名前…。
思い返すのはいつかのこと。
感覚的にはまだ新しい、けれども昔の、ちょっとした時の事。
まだ私が零になる前からのこと。