第18章 縁の時間
「いや、だから中原君?今度は蝶ちゃんに何したの君?」
「えらく懐いて…おるのかのう?其方らが仲良うなった頃を思い出す…」
「何もしてませんよ俺は。…?何だよ今度は?」
クイクイ、と中也の上着を控えめに引っ張ると、中也が少し屈んで私と目線を合わせる。
横浜へ帰還し、お土産を持ってポートマフィアに来たのはいいものの、昨日の今日で中也とどう接すればいいのか混乱した結果がこれだ。
『え、えと…その……』
「あー…姐さん悪い、何やらジェラシー期が舞い戻ってきちまったみてえだ」
『!?ジェラシー期って何ッ』
「蝶がえらく俺にやきもち妬く時期。あと遠慮しいになってるくせして甘えたがる時期」
謎の分析を始めた中也は何故だか慣れたように私にスラスラと語り始めた。
「久しぶりじゃのう、その言葉。では、可愛い蝶からの土産をいただこうとしようか」
「姐さん、蝶は確かに可愛いですがこいつは俺の「分かっておるから食いつくでない、これでも我慢しておるのじゃ、そんな事も察せぬから鈍いというのに」お、俺と蝶の扱いの差が…」
「……して、蝶ちゃん。…“中原君のところが、気に入ったのかい”?」
『!!…ん……』
首領の問いに、恥ずかしいながらも中也の胸元に抱きつきながら小さく答えた。
「っと…!…?首領、どうしてまたそのような事を?」
「ん?いやぁ、小さな頃を思い出してしまってつい…ふふ、蝶ちゃんのことまた惚れさせちゃったんでしょ中也君?罪な男だねえ…」
『……カップケーキとシフォンケーキが食べたい』
「惚れさせたって……!何つった?悪い、もう一回言っ『やっぱいいです…』悪かったって!?首領の事無視するわけにいかねえだろ!!?頼むから!!」
『私より首領…?』
口にしたところでハッとした。
首領と紅葉さんどころか、中也までもが目を丸くして私を見る。
口が滑った、何してんの私、子供じゃないんだから。
「ああ…あ〜……っ、首領、失礼働いてよろしいでしょうか」
「うん、いいよ、全力で許す。寧ろ首領命令、失礼しなさい」
「此奴など優先して蝶を寂しがらせてどうするのじゃ中也、放っておけ」
「紅葉君酷いよ!!?」
バッ、と両手で塞いだ口。
けれど中也が私の手をそこから取って、そのままふわりと私を抱き寄せる。
「断然蝶…………ジェラシー期最高…っ!!」