第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
処置というのは、言ってしまえば私の“血液を飲ませること”だった。
何故だか、私の血液は、口付けを交わして飲ませることで、人を癒す力をもっていた。
肩代わりをしてもだめ。
中也さんのプライドを傷付けるような事もだめ。
だから私は…私情もかなり挟んでいたが、彼が気付かないような、姑息で悪い手段を使ってしまった。
中也さんになら、使ってもいいと思えたから。
口付けを許せる相手だったから…
押し付けがましい言い訳になってしまうけれど、どうか貴方の唇を勝手に奪ってしまった私を、嫌いにならないでください。
中也さんを見つめ続けていると、一向に様子が改善されない事が分かった。
何で、どうして…私の血液を飲みさえすれば、きっと回復するはずなのに。
中也さんの頬に手を添えて、薄く開かれた唇を見る。
『まさか、飲んでないの……?こんな時くらい、力にならせてくださいよ、っ…』
涙が溢れる。
ポタポタと雫になって、中也さんの胸に落ちる。
いつか、誰かに教えられたことがあった。
触れるだけのものではない、深い、深い口付けがあるのだと。
『___ん、っ………ふぅ、っ』
中也さんの頬に添えた手が震える。
唇も震える。
どうすればいいのか、方法だけなら知っている。
でも、勇気を出して、今まで守ってきていたこの距離感を壊してしまってもいいのだろうか。
それでも、同じ壊してしまうものなら、私の小さな願望なんか壊れたって構わない。
中也さんの体が壊れてしまう方が、私にはその何倍も恐ろしい。
覚悟を決めて、もう一度だけ、心の中で謝った。
一度目とは違って今度は触れる唇の面積も多い。
『……っ、』
口付け全体で包み込むように、覆われるように、彼の唇を長く、長く塞ぐ。
『はっ、ぁ………ん、』
中也さんよりも先にこちらの息が持たなくなって、息を吸ってもう一度。
少し苦しそうに眉を潜めた中也さんだが、それでもまだ飲み込んではくれない。
私、した事ないよ、深いのなんて。
しかし怖がっている余裕もない。
早く、中也さんの体を暖めてあげたい。
『……ふ、ぅっ………ん、…』
恐る恐る、彼の口の中に届くように、角度を変えながら自分の舌を入れる。
すると突然、私の舌に、熱くてぬるりとした感触が絡みついた。
「何、してる…」