第3章 新しい仲間と新しい敵と…ⅰ
『中也さん…?なんで、そんなに苦しそうなの?なんでそんなに顔色が悪いの?』
分かってる。
こうなっていても不思議じゃなかった。
考えられるのはやはり、私が血を取りすぎたから。
手を握ってみると、ほんのり温かみがあったから、少しだけ落ち着いた。
けれど、今中也さんをこんな状態にさせてしまったのは、間違いなく私だ。
これなら、私の前で恰好いい中也さんが、私を置いて医務室から先に出て行ってしまったのにも納得がいく。
『やっぱり、無理してたんじゃないですか…』
中也さんの性格上、私がどこかに行く時はそれを見届ける事が常だ。
しかし、今日先に中也さんが出て行ってしまったのは…私の前からいなくなったのは。
輸血の後の怠さを私にバレないようにするため。
『……っ、ごめんなさい。』
このごめんなさいは、私は何のつもりで言ったのだろう。
自分の能力を使って、彼の血を少しずつ増量させる…中也さんを回復させる。
これは、私が肩代わりをしている訳では無い。
私が肩代わりをすれば、また血が足りなくなって、結局は同じ状態に戻ってしまうから。
“これ”をするつもりはなかったのだけれど、きっと私の血が、体が拒まない中也さんになら、助けになってくれるはずだから。
本当は、意識がある時に、貴方の方からして欲しかったのだけれども。
___俺が目の前で死にかけていて、自分が助ける手段を持っていたら、どうする?___
昼間の中也さんの言葉が頭の中で反響する。
そんなの、助けるに決まってるじゃないですか。
実際に今、私には、その手段があるんだから。
今までは私の意識がなかったから、私が知らなかっただけだったんだね。
やっぱり、ありがとうじゃないよ、中也さん。
ごめんなさい、無理させて。
ごめんなさい、知らなくて。
心の中で懺悔を繰り返す。
こんな事には何の意味もないのだろうけれど、そうしないではいられなかった。
『んっ…!』
中也さんが帯刀していたサバイバルナイフで指先を深めに切りつけ、多めに血を流す。
傷口が綺麗に塞がったのを確認して、流れ出た血液を自身の口の中に含む。
私は…蝶は今から、悪い事をします。
気付いても、知らないふりをしてあげてください。
処置を終えてから、再び私は口にした。
『ごめんなさい』
____貴方の唇を奪ってしまって
