第18章 縁の時間
「大丈夫、怒ってない。怒ってないから、話し『その喋り方ももうやめて…ッ……無理しなくていい、合わせなくていい!!…優しくしないで…っ』……無理もしてねえし合わせてもねえよ。俺は俺のためにしてるだけだ」
ゆっくりと、また少女に近づいていく。
今度は能力はまだ使われない…それを確認して、少女の前で傅くように膝をつき、目線をまた合わせる。
「…こっち見てちゃんと話せ。帰りたいならそれでいい、力になれるかは分からねえけど俺もちゃんと協力する…だから蝶、一人で思い詰めなくても…」
『!!帰りたくない!!!帰らなくていい!!……っ、帰らなくていいよ!協力なんかしなくていいよ!!』
「……こっち見て、ちゃんと話せ」
『!!!………ッ…中也さ…っ、!?…な、んで……?』
蝶が俺と目を合わせてから、それを褒めるようにちゃんと頭をまた撫でる。
それにボロボロと少女は雫をこぼしていく。
ああ、また泣かせちまった…また傷付けちまった。
「………親元に帰りてえのなんか当然の事だ…俺や他人がとやかく言うような事じゃねえ。…どうすりゃあ帰れる?方法は本当に何も無いのか…?」
ビク、と少し大きく肩を跳ねさせ、蝶はそのまま固まった。
心当たりのある顔だ…しかし何故だか顔色が悪い。
どういう事だ、これは。
「?何を…ッ!」
『____………そうすれば、多分…』
ああ、どうしてこの少女がこんな風に生きてきたのか…全ての辻褄が合ってしまったような気がした。
どうして死に渇望していたのか…どうして、死にたがっていたのか。
仲間がいなくなっていくから、遺された者は辛いから。
そんなレベルの話じゃない、こいつはそこまで大人じゃない。
もっと他にもあったんだ、ちゃんと知らなかっただけで………この少女の首を更に鎖で締め付けるような行為ばかりを、俺がしてしまっていたのだ。
俺がこの少女をここに…俺に縛り付けていってしまっていたのだ。
俺が身動きを取れないようにさせてしまっていたのだ。
きっと冷静に考えればそうではないのだろうし、この少女はきっと俺のせいなどではないと言う…そして恐らく、直接的には決して俺のせいではない。
しかしどうだ、彼女に生を要求させ、死にたくないと思わせて…生きようと言った俺が、元の世界に帰りたがらせているんじゃないか。
___私が死ねば…死ねたなら…