第18章 縁の時間
教室に入ると視線が刺さる。
物凄く強い視線が…何を隠そう、蝶からのものだ。
自律思考固定砲台の後ろに隠れてチラリとこちらを覗いている。
「あ、中也さんおかえり……って蝶、なんでそんな所に?今の今までここにいたよね?」
『……何でもない』
「「「いやいや、不自然すぎんだろ!!!」」」
「…何でもないなら遠慮なくそっちに行……はあ!?お前またっ!!」
俺が蝶の方に足を踏み出した瞬間にまた教室の入口に戻された俺。
まだ蝶の能力を見るのに慣れきっていない餓鬼共はどよめくが、蝶はまだこちらの様子を伺いつつ、どこかビクビクと怯えたような目をしている。
「ち、蝶?中也さんが来たのに何を…」
『!!……めんなさ…っ』
「謝んなくていい…から、そっち行かせてくれねえか?蝶」
『ぁ…っ!ダメ、ダメ!!今こっち来ないで中也さ…「さん付けしたから聞いてやらねえよ」な……ッ!!』
蝶が能力を行使する間もなくこちらも異能で距離を詰め、顔を隠そうとした腕を掴んで上げさせた。
蝶は真っ赤にさせた顔を俯かせて、もう片方の手で口元を覆うように顔を隠そうとする。
「……蝶?」
『ひゃッ…!』
「「「………ん?」」」
泣きそうな顔になる蝶はフル、と体を震わせていて、今の方がよっぽどこいつを犯しているような…これ以上はよそう。
この反応はなんだ、前にもあったような気がするぞ。
「…蝶、中也さんとこいにくいならこっち来る?」
「は?カルマ、俺のところにいにくいってどうい……!?」
「「「…中原さん何したの?」」」
「何もしてねえよ!!!!」
一瞬にしてカルマの後ろに隠れやがった蝶。
『お、こらないで…中也さ………中也…っ』
「!!お、怒ってねえぞ蝶!?怒ってねえからこっちに…せ、せめて理由だけでも……な?」
必死に蝶から理由を聞こうとすると、蝶はカルマの後ろからまた少し顔を覗かせて俺に言った。
『も、う…いい、からッ!!……わ、たしに変に優しくしないで…っ……あ、んまり名前、呼ばないで!!!』
「「「「んな!!!?」」」」
「え……っと蝶?…中也さんに本当に何されたの?…………ショックデカすぎて本人石みたいに固まっちゃってるんだけど」
男中原中也…遂に恋人に反抗期が来てしまったようです。
遂に、可愛い蝶に拒まれる時期が訪れてしまったらしいです。